●双葉郡構想、県教育長が明言
県教育委員会の杉昭重教育長は2日、朝日新聞のインタビューに応じ、双葉郡の8町村の教育長が開校を要望した中高一貫校について「県立中学の設置はしない」と述べ、県立高校のみになると明言した。
8町村の教育長が7月31日にまとめた「双葉郡教育復興ビジョン」の柱となる、中学校を併設した県立一貫校の開校を明確に拒んだかたちだ。杉氏は「各町村がすでに再開させた中学校は生徒を増やそうと努力しているのに、県立の中学をつくれば水を差してしまう」と理由を述べた。
ただ「双葉郡の既存の学校がなくなってしまう状況になれば県立中学の設置を考える」との見通しは示した。ビジョンに盛り込まれた改革案については「町村立の中学でも実現できる話なので、中学校については町村にがんばってもらいたい」と述べ、新設する県立高校と各町村立の中学を連携させ、入試枠などで優遇する一貫校にするとした。
また、県立高校の設置費用は全額国に支援を求めるという。(岡本進)
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杉教育長へのインタビューの要旨は以下の通り。
――8町村の教育長は新設校の2015年度開校を求めているが、実現性は。
町村長の議論で設置場所が早急に決まれば可能だ。万難を排してやる。
――中学校を併設した中高一貫校とするのか。
県立中学の設置はしない。町村立の中学と県立中学との共存は厳しい。町村立中学は生徒を増やそうとがんばっている。県立中学ができれば生徒は減り、努力を台無しにしかねない。
――しかし「生徒が減り続け、再開させた学校は3年で消滅するかもしれない」と嘆く教育長もいる。地元の教育長全員が「今の努力では限界だ」と考え抜いた結論が「一貫校」構想だ。
協議会では「学校を盛り上げる方法はあるから、そう悲観的になるな」と地元の教育長さんたちを励ましたぐらいだ。ビジョンに書かれた改革案は町村立の中学でも実現できる。
――全国に避難する8千人の双葉郡の子どもたちの受け皿をつくるべきでは。
県立中学ができたら戻るというのはあり得ない。
――協議会で杉氏は「中学を併設した一貫校を検討する」と約束していたが。
私からすれば「検討する」だけでかなりの譲歩だ。県立中学の併設には条件が整わないと。
――どんな条件か。
双葉郡の既存の学校がなくなってしまう状況になれば設置を考える。帰還や除染など教育で語れない要素があるので状況を見極める。
――地元の教育長たちは「県の危機意識が足りない」と批判している。
彼らとの認識の溝は埋まらず、平行線のままだ。
――県立中学の同時開校を再考する余地は。
ない。
――新設校の募集を始めた時点でサテライト高校の募集を取りやめる方針だが、もっと早くにサテライト高を見直すべきだったのでは。
満足いく教育環境ではないが、遅いという認識はない。生徒が在籍する限りサテライト校は継続する。新設校に集約するといっても周知期間が必要なので、来年度の入学募集はする。
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