【大岩ゆり】1945年8月6日、広島で被爆し、世界で初めて「原子爆弾症」と診断された女優、仲みどりさん(享年36)のカルテの一部などの診療記録が見つかった。戦後、行方不明になり、「幻のカルテ」として研究者が捜していた。被爆時の様子や18日後に亡くなるまでの様子が詳細に記されていた。
特集:核といのちを考える仲さんは移動演劇隊「桜隊」の一員。爆心地から約750メートルの宿舎で被爆。実家のある東京に逃げ帰り、東京大学病院を受診した。
見つかったのは、カルテのうち、治療歴や血液検査の結果、体温などが一目でわかる記録と、担当医がまとめた診療の経緯一覧。診断名には「四肢爆創(原子爆弾症)」と記されていた。当時の関係者の遺族が、遺品を整理していて発見した。朝日新聞が東京大学に取材し、仲さんの記録の原本と確認した。
仲さんの症状や解剖結果は、日本学術会議の「原子爆弾災害調査報告書」や、米軍が英訳して持ち帰った原爆資料に引用されている。しかし、原本の大半は行方不明で、研究者の間では「米軍が持ち去った」「米軍の接収を恐れた関係者が隠した」などの諸説があった。行方不明の経緯は不明だが、今回の発見で、米軍の関与は否定された。