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【社会】

多摩川にシジミ復活 水質改善 乱獲防止へ漁業権設定

多摩川で採れたシジミ=東京都大田区で

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 多摩川の河口域で一時姿を消したシジミが復活し、両岸の東京都大田区と川崎市の干潟で多くの人が潮干狩りを楽しんでいる。下水道の整備や住民の清掃活動が実り、シジミの成育環境が改善された。東京都は乱獲を防ぐため、今秋、半世紀ぶりにシジミの漁業権を設定する。同時に市民がシジミ採りも楽しめるよう、関係漁協に新たなルールづくりを求めていく。 (滝沢学)

 羽田空港に接する天空橋駅そばの干潟。熊手で軽く川底をかくだけで、二センチほどのシジミが次々と顔を出す。「すごくよく採れる。採り尽くさないようにしないと」。世田谷区から自転車で一時間かけて来た会社員の石川博一さん(45)は、あまりの手応えに戸惑うほどだ。中には三センチほどに育った大物も。「飛行場が近いのに、自然に恵まれていい場所ですね。次は家族を連れてきます」

 「きょうはシジミ汁だな」。河口から三キロ上流の大師橋付近。町田市から車で訪れた建設業の石井智也さん(62)も「すごく採れるよ」と声を弾ませた。一時間で二百個以上だ。

 多摩川では高度経済成長期の昭和四十年ごろから汚染が急速に進み、シジミは姿を消していった。河口で再び目立つようになったのは五、六年前からだ。

 都によると、下水道整備で水質が良くなったことに加え、アユの遡上(そじょう)のため調布の取水堰(ぜき)を定期的に開放するようになり、川底の砂が河口に流れるなどして、シジミが育ちやすい環境になったとみられる。

 河口近くの高畑町会長の大島悦雄さん(66)=大田区西六郷=は有志の会をつくり、十七年前からシジミの放流を続けてきた。ここ十年は、国内有数の産地、島根県の宍道湖にある日本シジミ研究所の中村幹雄所長(71)から毎年十キロを取り寄せてきた。今年も六月中旬にJR線の鉄橋付近から放ったばかりだ。町会は年二回、河川敷の清掃活動にも取り組んでいる。

 大島さんは「昔はボラやハゼも多かった。子どもたちが水遊びできるきれいな多摩川が戻ってきたのはうれしい」と、シジミ復活を喜んでいる。

<多摩川のシジミ> 淡水と海水が混ざり合う汽水域で採れる。農林水産省が公表している河川別漁獲統計によると、多摩川の漁獲量は2008年には記載がなく、09年は25トン、10年は151トン、11年は131トン。大田漁協のシジミ水揚げ量は、都漁連水産物流通センターへの出荷分だけで10年度が122トン(2400万円)、11年度が80トン(1700万円)。

 

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