河北春秋

 「あの当時のことをよく調べますと」と戦史に詳しい作家の半藤一利さんが言っている。「排除の論理というか阻害の論理が働くんです」▼鼎談(ていだん)集『日本海軍はなぜ過ったか』の一節だ。こうも言う。「『俺たち仲良くやってんだから、おまえ、そんなつまんない変なことを言うな』というような」「どこの会社や組織でもそうだと思います」

 ▼鼎談の相手で作家の澤地久枝さんも「横にしっかりつながって英知を集めるという感じではないですね」。俊秀をそろえたとされる海軍でさえ、内向きの論理がまかり通る組織だったらしい▼全日本柔道連盟(全柔連)の会長ら執行部が総退陣する。ようやく表明した。一連の経過を見ると、連盟だけで通じる論理が先走っていた。まるで「俺たち仲良くやってんだから」と言わんばかりの

 ▼ソウル五輪のメダリストで筑波大准教授の山口香さんが著書に書いていた。「会長の周りはイエスマンが多い」。山口さんのように、状況がすっきりと見える頭脳明晰(めいせき)な直言居士は、しばしば疎んじられる▼チラッとこんな感慨が胸中をよぎった人も、あるいはいるかもしれない。「うちの会社も似たところが」「わが町内会もどこかしら」…。排除の論理は組織を常に待ち構える落とし穴だ。

2013年08月01日木曜日

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