The Lone Gunmen - ザ・ローン・ガンメン - ★★1/2
放送局: FOX
プレミア放送日: 3/4/01 (Sun) 21:00-22:00
製作: テン・サーティンズ・プロダクションズ、20世紀FOXテレヴィジョン
製作総指揮: クリス・カーター、フランク・スポトニツ、ヴィンス・ギリガン、ジョン・シバン
共同製作総指揮: ロブ・ボウマン、ジョン・ピーター・コーサキス
製作: ポール・ロブウィン
監督: ロブ・ボウマン
脚本: クリス・カーター、フランク・スポトニツ、ヴィンス・ギリガン、ジョン・シバン
撮影: ロバート・マクラクラン
音楽: マーク・スノウ
編集: クリス・ウィリンガム
美術: マイケル・ボールトン
出演: ブルース・ハ−ウッド(ジョン・フィッツジェラルド・バイヤース)、トム・ブレイドウッド(メルヴィン・フロヒキー)、ディーン・ハグランド(リチャード‘リンゴ’ラングリー)、スティーヴン・スネデン(ジミー・ボンド)、ズレイカ・ロビンソン(イヴ・アデル・ハーロウ)
物語: バイヤース、フロヒキー、ラングリーの「ローン・ガンメン」トリオは、巨大テクノロジー企業の イー・コム・カンパニー (e-com-con) の最新チップ「オクティウム IV (OCTIUM IV)」にコンピュータを使用するユーザの個人情報を盗用する回路が組み込まれているという情報を得、オクティウムIVの発表会に忍び込んでチップを盗み出そうとしていた。しかしもう少しというところで邪魔が入り、まんまとチップを髭の男に変装したイヴに横取りされてしまう。やっとのことで解放されてアジトに帰り着いたローン・ガンメンに、バイヤースの父の訃報が入る。バイヤースの父は政府関係の仕事をしていたが、どうやら極秘の秘密を知りすぎて消されたらしい。しかし父の家を捜索したローン・ガンメンは、自動車事故で死亡したはずなのに家の中に大量の血が流れた形跡があり、しかもそれが奇麗に後始末されていることから不信を抱く。バイヤースは父が生きてどこかに潜んでいることを確信、調査に乗り出す。そしてついに父と再会、政府が軍事産業を活性化するために、わざとテロリストの仕業に見せかけて民間旅客機をニューヨークに墜落させる計画を立てていることを突き止める。バイヤースと父は客を装って旅客機に乗り込み、独自に機内を調査するが、実は旅客機には爆弾が仕掛けられているわけではなく、遠隔操作で墜落する仕組みになっていたのだ。ラングリーは必死に機内のコンピュータに侵入を試みるが、どうしてもアクセスできない。それにはオクティウムIVがどうしても必要だった。フロヒキーは単身イヴとコンタクトを試みる‥‥
今シーズン限りでデイヴィッド・デュカヴニーは「X-ファイル」のモルダー役を降りることが決定している。2月最終週の放送では、ついにエイリアンにさらわれたモルダーの死が決定的となったように見える。「X-ファイル」は3月いっぱいは小休止して、4月からシーズン・フィナーレに向けて連続放送となるが、果たしてモルダーは本当に死んだのかもそこで明らかになる。いずれにしてもデュカヴニーが番組を降りた今、「X-ファイル」が今後も続くかどうかは製作者ですらまだわからない。製作総指揮の一人、フランク・スポトニツは、番組の先行きが不透明なため、とにかく今シーズンのフィナーレが番組の最終回としても納得の行く、決定的なクライマックスを用意したと言っている。番組が続くかどうかは、春から夏にかけての製作者とFOXの話し合いの結果次第となる。
「X-ファイル」は超常現象やエイリアン、政府の陰謀等のテーマにスーパーシリアスなアプローチで挑むというSF番組であった。画面も黒っぽく、ハッピー・エンドでない暗い結末が多いということでも他の番組と一線を画していた。実際、この番組でできがよかったのはアンハッピー・エンドで終わったものが多く、カルト集団の集団自殺を扱ったエピソードや、自分の死を予知してしまった男の悲劇を描いたエピソードなど、救いがない話の方が強く印象に残っている。
そのため、たまには息抜きも必要だと判断したのか、時に力を抜いた、軽めの話を製作することもあった。その代表が、政府の陰謀を弾劾する地下新聞「ザ・ローン・ガンメン」を発行する3人のコンピュータ・オタク、ローン・ガンメンをフィーチャーした幾つかのエピソードである。いつもスーツを着こなしているバイヤース、一見ロックンローラー風のラングリー、冴えない中年の小男フロヒキーという摩訶不思議なトリオは、第1シーズンの「E. B. E. (Extraterrestrial Biological Entity: 地球外生命体)」で登場、瞬く間に人気を獲得した。
しかし、だからといってすぐに彼らを主人公とした新シリーズを製作する話が持ち上がったわけではない。「X-ファイル」クリエイターのクリス・カーターとスポトニツは、一昨年、まずは「X-ファイル」同様のシリアスなSF番組、「ハーシュ・レルム (Harsh Realm)」を製作した。「ローン・ガンメン」が日の目を見たのは、その「ハーシュ・レルム」が失敗してわずか一と月でキャンセルされたために、次の番組を製作する必要が出てきたからに他ならない。とにかくそういうわけで、「ローン・ガンメン」はオフ・ビートのコメディ/ドラマ番組として、3月に「X-ファイル」が休んでいる間、その枠で放送されることになった。その後、「ローン・ガンメン」はレギュラー枠の金曜夜9時に移動することが決まっている。
さて、その「ローン・ガンメン」の中身だが、コメディ/ドラマとうたわれているわりには、笑えるようなシーンはほとんどない。しかし思わずにやりとするようなシーンはあり、その代表が冒頭の「ミッション・インポッシブル」のパロディだろう。新チップ「オクティウムIV」を盗み出すべくe-コム・カンパニーに侵入したローン・ガンメンは、よりにもよってその中で最もスタント向きでないフロヒキーを、トム・クルーズさながら天井からワイヤーで吊り下げるのだ。もちろんそれがうまくいくわけはなく、彼らは手柄をライヴァル・ハッカーのイヴに横取りされてしまう。
イヴは最初男に変装しており、それがつけ髭とかつらを取ると男顔の美女、というところがポイントなのだが、このダークな瞳にブルネットの髪というのはアクションものでの最近の流行り、というかFOXの流行りのようで、「ダーク・エンジェル」 のジェシカ・アルバが、まさにこんな感じである。顔、スタイル、性格付けまでそっくりだ。因みにこのイヴの名前イヴ・アデル・ハーロウ (Yves Adele Harlow) というのは、J.F.K.を暗殺したリー・ハーヴィ・オズワルド (Lee Harvey Oswald) のアナグラムである。凝ってること。
私は「ローン・ガンメン」のプレミアではほとんど笑えなかったのだが、ギャグ以外で印象的なシーンはあった。その代表は、死んだことになっているバイヤースの父を埋葬する墓地のシーンで、神父が祈りを捧げた後、バイヤースに近寄って、これは君がやることが相応しいと言って、あるものを手渡す。それが何かのリモート・コントロールで、バイヤースがスイッチを押すと、埋葬する代わりにバイヤースの父の遺灰を詰めた小型ロケットが点火し、空中に飛び出した後、空高くで粉々に砕け散る。政府の航空関係で働いていたという父に相応しいお別れの場面なのだが、アメリカ人ならこういうこと本当にやりそうだと思わせてくれた。もちろん私はこういうのは嫌いじゃない。
しかし全体として見ると、やはり話を端折っているという印象は拭い難い。死んだと思っていたバイヤースの父が生きていたとローン・ガンメンが確信する件りなんて、いくらなんでもそんなの、という話の飛び方の連続である。父の家でフロヒキーが滑って転んだのを契機に、絨緞の上に大量の血が流れていたのを誰かが消し去ったことを発見する。まあいいでしょう。しかし、それでなぜそれが父を暗殺しに来た殺し屋の血で、間違って転んで自分で自分を撃ってしまったという結論になるのか。慌てて逃げようとした父はなぜこんな簡単に車に仕掛けられた遠隔操作装置を発見してしまうのか。ちょっと無理があり過ぎる。
しかしローン・ガンメンのファンは、そういうこと気にしないんだろうなあ。実際の話、コメディだからと聞いて笑えるシーンを期待していると肩透かしを食うが、話そのものは面白くないわけではない。やはりローン・ガンメンのトリオというのはなかなかのキャラクターであり、充分興味を持続させてくれる。イヴという紅一点を加え、さらに第2回目からはローン・ガンメンに新しい仲間が加わる。もし来シーズンまで更新されるならば、充分「X-ファイル」の後釜を継げる番組に成長できる可能性もあると思うが‥‥
追記 (2001年5月):
このほど今秋の新シーズンの番組編成が発表され、それによると、「X-ファイル」は今後も続いていくことになった。もちろんデュカヴニーなしでである。シーズン・フィナーレでスカリーが抱えていた子は、結局モルダーの子だったのか? もしかしたら「X-ファイル」の最終回になるかもと思って最後の数回は結構真面目に見ていたのだが、それでも私にはよくわからなかったぞ。いずれにしても「 X-ファイル」の後釜を継げるかと注目された「ローン・ガンメン」だが、そういうわけで「X-ファイル」が今後も続いていくことが決定したため、「ローン・ガンメン」はお役ご免になってしまった。視聴率も段々落ち目になっていったから、しょうがないと言えばしょうがない。でも、きっと彼らはまた「X-ファイル」で活躍の機会があることだろう。
HOME