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【コラム】

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 「銀の匙(さじ)をくわえて生まれてきた」という英語の言い回しがある。「裕福な家に生まれた」との意味だが、ブッシュ元米大統領(父)は、政敵にこう言われたことがあった。「彼は銀の足をくわえて生まれてきた」▼英語で「足を口に入れる」と言えば、「失言する」「どじを踏む」という意味。お坊ちゃま育ちで、しかも、どうしようもない失言癖のあるブッシュ氏を、辛辣(しんらつ)かつユーモラスに皮肉ったひと言だ▼高祖父が明治の元勲大久保利通で、祖父は吉田茂元首相。超のつく名門一族に生まれた麻生太郎副総理兼財務相も、間違いなく、「銀の匙をくわえて生まれてきた」人物だろう▼その麻生氏が、改憲の議論をめぐって、「(ナチス政権の)手口を学んだらどうか」と発言した。当然ながら国際的な批判を浴びた。麻生氏は発言を撤回して、「私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾だ」と釈明している▼麻生氏のくだけた物言いは確かに人をひき付けるものがあるが、とにかく失言が多い。国際経験も政治の経験も人一倍豊かなはずなのに、なぜこんなに批判や「誤解」を招きやすい発言をするのか。どうにも理解に苦しむ▼作家の故なだいなださんは、麻生氏を「失言の意味の分からない人」と評していた。ひょっとすると、わが副総理も、ブッシュ氏のように「銀の足をくわえて生まれてきた」のだろうか。

 

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