岡山大大学院医歯薬学総合研究科の40代男性准教授が、外科治療後の症状などに関するほぼ同じ内容の論文を、日本の学会誌と複数の海外専門誌に投稿していたことが31日、大学関係者への取材で分かった。論文には新規性が求められるため、こうした多重投稿は倫理面から禁止されている。引用であることの記載はなく、転載許可も得ていなかった。今春、海外専門誌の指摘で発覚したという。
同大は5月下旬、同研究科の教授らで調査委員会を設置。本人や論文作成に関わった共著者から聞き取りなどを実施しており、近く処分を検討する。同大は「データの捏造(ねつぞう)、盗用はないが、研究者として恥ずべき行為。論文投稿の研修といった再発防止策を講じたい」としている。
男性准教授は数年前、国内の外科系学会誌に日本語で論文を執筆、掲載された。その後、論文を英訳して海外の専門誌に投稿。内容が似通った英語の論文2本を別の海外誌にも出し、計4誌に掲載されたという。
大学関係者によると、関連論文には複数の共著者が存在。名を連ねている同じ教室の教授らの監督責任が問われる可能性もある。山陽新聞社の取材に男性准教授らは「ノーコメント」としている。
一般的に論文の掲載数は研究者の実績を示す指標の一つ。権威ある媒体ほど、研究費の獲得、地位向上につながるとされている。