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Listening:麻生副総理発言、なぜナチス例示か 国際社会と認識ずれ 橋下氏は「行きすぎたジョーク」

2013年08月02日

閣議に臨む麻生太郎副総理兼財務相=首相官邸で2日午前9時1分、西本勝撮影
閣議に臨む麻生太郎副総理兼財務相=首相官邸で2日午前9時1分、西本勝撮影

 順風満帆に見えた安倍政権が、旗印の「改憲」を巡る舌禍でつまずいた。ナンバー2の麻生太郎副総理兼財務相が講演でナチス政権を引き合いにした「手口を学んだらどうか」発言。撤回はしたものの、ユダヤ系人権団体は納得せず、国内の有識者からは「国際社会との認識のずれ」を指摘する声が聞かれる。

 【ロサンゼルス堀山明子】麻生氏の発言に抗議していた米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)のエイブラハム・クーパー副所長は1日、毎日新聞との電話インタビューに応じた。

 麻生氏の発言撤回コメントについて「民主主義プロセスの重要性を話すなら、なぜナチスを例示したのか、今もまだ不可思議だ」と述べ、追加説明を促した。「麻生氏の発言撤回は妥当であり、安倍政権が内閣として(ナチスを肯定しないと)公式見解を示したことは非常に重要だ」と一定の評価をしたうえで語った。

 麻生氏がコメントで、国民的議論が欠落した「悪(あ)しき例」としてナチスに言及したとする説明について副所長は「(講演で)正反対のことを話そうとした。もう少し説明してもらいたい」と割り切れない心情を示した。

 また、日本維新の会の橋下徹共同代表が1日、麻生氏を擁護する文脈で「行きすぎたブラックジョーク」との認識を示したことに対し「到底受け入れられない。広島、長崎、ナチス、大虐殺でジョークが入り込む余地はない」と批判した。

 同団体は1977年設立。反ユダヤ主義を監視し、ホロコースト(ナチスによるユダヤ人大虐殺)の教訓を伝える活動を続けている。95年には文芸春秋の月刊誌「マルコポーロ」がホロコーストを否定する記事を掲載したとして抗議し、同誌は廃刊となった。

 ◇閣僚「説明が必要」

 麻生太郎副総理兼財務相がドイツのナチス政権を引き合いに出した発言を巡って海外から批判が相次いでいることを受け、閣僚からは2日午前の閣議後の記者会見で、安倍政権としてナチスを肯定しないとの説明が改めて必要との声が相次いだ。

 岸田文雄外相は「私の立場からは、外交・政治問題化しないよう努力しなければならない」と強調。「わが国は戦後一貫して平和と人権を徹底的に擁護する社会を築き上げてきた。こうした国の姿勢をしっかり説明していきたい」と述べた。山本一太沖縄・北方担当相も「(発言)撤回でけじめをつけ、安倍政権がナチスを肯定することはありえないと改めて示していく必要がある」と述べた。

 この日の閣議や閣僚懇談会では、安倍晋三首相や麻生氏から説明はなかったという。菅義偉官房長官は会見で「あくまで誤解だ。見解の相違や価値観の違いなど議論の余地がある問題ではない」と強調。「本人が撤回したことで決着だ」と述べ、事態は沈静化するとの見通しも示した。甘利明経済財政担当相は「物事をやさしく説明しようとして、かえって誤解を招いてしまったのではないか。伝わっているニュアンスと自身の思いが全然別だということで撤回されている」と指摘した。【松尾良】

 ◇記者団に擁護発言

 日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は1日、麻生氏の発言について大阪市役所で記者団の質問に答え、「ちょっと行き過ぎたブラックジョークだったんじゃないか」と述べた。発言全体に関しては「ナチスドイツを正当化したような趣旨では全くない。憲法改正論議を心してやらないといけないということが趣旨だったんじゃないか」と理解を示した。さらに、ナチスを例えにしたことについて「政治家で(こうした言動を)やろうと思ったら、こういう批判は出るんだろう。エンターテインメントの世界とかならいくらでもある」とも述べた。【村上尊一】

 ◇世界意識し発言せよ

 京都大の中西寛教授(国際政治学)は、中曽根康弘元首相が1986年に「米国は知的水準が低い」などと発言し、反発を買ったことを引き合いに出し、「政治家の発言は世界に伝わることが前提で、世界の文脈を意識して発言すべきなのに、いつまでも進歩しない」と批判。「ナチスの手口を学べ」という発言についても「むしろ、そうなってはいけないという例に使うべきで、少なくとも憲法改正には反生産的。反対派に塩を送ったようなものでとんちんかん」と話した。

 ◇日米同盟に影響

 元外務省主任分析官で作家の佐藤優さんは「麻生さんの発言は、ナチスの手口を肯定したように読める。国際社会の認識と致命的なずれがあり、謝罪せず『誤解を招いた』と発言したことは、歌がすごく下手な人がカラオケのマイクを離さないのと似ている。問題の深刻さに気付いていない」と厳しい見方を示した。

 さらに「一番の問題は日米同盟に影響があること。米国が戦った大日本帝国と今の日本は全く別の国だが、今回の発言で同じ国じゃないかと思われてしまう」と指摘した。

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