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2013.08.02

<書評>『自衛隊員が泣いている―壊れゆく“兵士”の命と心』(三宅勝久著。花伝社。本体1600円)

 東日本大震災の懸命な救援活動で、自衛隊に対する国民の好感度はアップした。2012年の内閣府による調査では「良い印象を持っている」と回答した人が91.7%と過去最高を記録した。その一方、自衛隊の自殺率は年々増加し、2012年度は実に83人にものぼるという。省庁のなかでも突出して高い。好感度は高いのに自殺率が高いのは何故なのか――。本書は、『悩める自衛官』『自衛隊員が死んでいく』など一貫して自衛隊内部を取材してきたフリージャーナリスト・三宅勝久氏の最新刊であり、大手マスコミが報じない、自衛隊の内部事情を深く取材している。上官によるいじめ(護衛艦「たちかぜ」事件)、警務隊による執拗な取調べ・濡れ衣調査、徒手格闘という名の殺人的な訓練・・・。自衛官が自殺(死亡)に至る理由は様々だが、その原因を組織を挙げて隠蔽し、責任を回避しようとするあり方は、どの事件にも現れている。冒頭に登場する「護衛艦『たちかぜ』アンケート事件」をみてみる。海上自衛隊の護衛艦「たちかぜ」の1等海士(21)が2004年に自殺した。遺書が発見され、上官による虐待が明るみに出た。ところが自衛隊は、海士の自殺が上官の虐待によるものであることを否定する「内部調査」の結果を遺族に届けた。納得がいかない遺族側は防衛省に対し、情報公開請求をおこなうが、証拠は「不存在」と回答。遺族側は国家賠償請求訴訟を起こす。そのなかで自殺直後に「たちかぜ」乗務員を対象にしたアンケートの公開を求めるが、「廃棄した」の一点張り。遺族と弁護団の努力、さらに国側代理人の現職自衛官の内部告発を受け、突如として防衛省は「アンケートが見つかった」と発表した。隠蔽していたとしか考えられない。「暗部を暴いたらクビになる」・・・元一等陸尉は著者のインタビューに答えて、「カラ出張による裏金作り」を内部告発した結果、「公金横領」をでっち上げられた経緯を説明している。このような隠蔽体質やいじめ体質を見ると、自衛隊と警察はそっくりだ。「『改憲』『国防軍』『尖閣問題』などが政治の争点として浮上し自衛隊に関心が高まっている今、ありのままの自衛隊の姿を知り、理解することが何より重要ではないだろうか。事実を抜きにして実りある議論はない」(まえがきより)。
 2013年8月2日掲載。この記事の続きを見たい方は、本紙改訂有料ネット記事アクセス・ジャーナルへ

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