内閣法制局:長官に小松駐仏大使起用へ
毎日新聞 2013年08月02日 11時52分
安倍晋三首相は2日、内閣法制局の山本庸幸長官(63)を退任させ、後任に小松一郎駐仏大使(62)を充てる方針を固めた。8日にも閣議決定する。小松氏は外務省出身で、法制局勤務の経験はない。首相は集団的自衛権行使容認に向け、憲法解釈の変更を検討しており、解釈見直し派の理論的支柱だった小松氏を送り込むことで、行使容認に向けた布石を打つ狙いがある。
内閣法制局の長官人事は、ナンバー2の次長が昇進する人事が慣例。法制局未経験者が外部から起用されるのは極めて異例だ。小松氏は一橋大学を中退して、1972年に外務省に入省。国際法局長などを経て、2011年から駐仏大使を務めている。
小松氏は国際法局長当時、第1次安倍内閣で発足した首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)に事務方として参加。解釈見直しを提言した懇談会の報告書の取りまとめにも深く関わっている。
集団的自衛権は「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」と定義される。国連憲章に規定があるが、政府はこれまで「国際法上、保有しているが、憲法上は行使できない」と解釈してきた。
特に「憲法の番人」と呼ばれる内閣法制局は、従来の政府答弁を否定することとなる憲法解釈の見直しには強く抵抗。これに対し、日米同盟を重視する外務省は解釈変更に前向きで、政府内では何度も意見対立が表面化してきた。
首相は集団的自衛権の行使を巡り、安保法制懇の検討作業を加速させ、新たな報告書を受け取ったうえで、判断時期を慎重に見極める方針だ。行使に慎重な公明党幹部は小松氏の起用について「これまで長く深い議論を積み重ねてきたわけで、人事だけで集団的自衛権の解釈を変えることは無理だ」と警戒している。
一方、退任する山本氏は旧通産省出身で11年12月に長官に就任。外務次官の後、最高裁判事を先月まで務め、定年退官した竹内行夫氏の後任として、最高裁判事に就く。【古本陽荘】