米国の不法移民議論で存在感増すアジア系

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  • MIRIAM JORDAN

[image] Emily Berl for The Wall Street Journal

ミシェル・ユンさん

 【ロサンゼルス】カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に通うミシェル・ユンさんは、高校の卒業式で総代を務めた。4年制の大学に通うのは一家で初めて。韓国人を両親に持つ彼女は、不法移民でもある。

 ピュー・ヒスパニック・センターによると、米国にはユンさんのようなアジア系の不法移民が約130万人おり、ヒスパニック(中南米)系の830万人に次いで2番目に多い。

 人数が比較的多いにもかかわらず、アジア系不法滞在者はこれまで移民政策に関する議論で目立たない存在だった。だが、不法移民が市民権を獲得する道について議会が検討するなか、ヒスパニック系が長年やってきたように積極的に発言するようになってきている。

 7月31日にはアジア人のグループが、移民政策の包括的な改革に向けて「アジア系のまとまった声」を上げるため、全米ツアーを敢行すると発表した。アトランタ、ヒューストン、ロサンゼルス、その他6都市に立ち寄り、地元コミュニティーのリーダーや連邦議会の議員と面会するという。

 全米の不法移民の団体「ブリッジ・プロジェクト」のディレクターを務めるギャビー・パチェコさんは「アジア人は存在感が増しただけでなく、重要な役割を果たすようにもなっている」と述べた。

 パチェコさんは、何人かのアジア人が積極的に意見を述べていることが他のアジア系住民が発言する勇気を持つ助けになった、と指摘する。

 ワシントン・ポストの記者時代に所属チームがピュリツァー賞を受賞したというホセ・アントニオ・バルガスさん(32)はフィリピン生まれ。不法移民問題について発言するようになったアジア人のさきがけのひとりだ。自身が不法滞在者であることを2011年に明らかにした。

 最近では、UCLAで不法滞在の学生の集まりに対し、声を上げるよう訴えた。現在32歳のバルガスさんは12歳でカリフォルニア州に送られ祖父母と暮らしたが、違法滞在だと知ったのは4年後に運転免許証を申請したときだったという。

 不法滞在のアジア系学生は、同じ状況にあるヒスパニック系学生と似た問題に直面している。連邦政府や州からの援助が確保できないために有名大学への進学を断念することも多い。

 シンガポールで生まれボルティモアで育ったホン・メイ・パンさん(24)は「『われわれアジア人は成功者だ』という"模範的なマイノリティー神話"があり、不法滞在者だとは宣伝すべきではないという考えがあった」と指摘し、「もうそろそろ、このことについて話をし認知度を高めるべき時だろう」と語った。

 ホン・メイ・パンさんは最近、他のアジア人とともにニューヨークやニュージャージーの州議会でロビー活動を行い、不法滞在の若者に運転免許証を取得したり学生向け経済支援を受ける資格を与えることを認める法律が必要だと訴えた。ワシントンで全国集会に参加し、移民への関心が強いことで知られるマイク・ホンダ議員(民主、カリフォルニア州)やクリスティン・ジルブランド、チャールズ・シューマー両議員(いずれも民主、ニューヨーク州)の側近と会ったこともある。

 子供の頃に米国に連れてこられた不法滞在者を一時的に国外退去から守り、労働許可を与える連邦政府のプログラムが昨年始まった。支援者によると、不法滞在のアジア人が安心して表に出る一助になっているという。

 ルーク・フアンさん(22)はこのプログラムに申請した後、東海岸の新しい不法滞在学生グループに加わった。12歳のときに韓国から米国に来て、これからシカゴ大学の博士課程に入るフアンさんは、通っていたニュージャージー州の高校には不法滞在の生徒が自分しかいなかったとみている。「アジア人は移民議論の一部であるべきだ。ヒスパニック系だけの問題ではない」という。

 ヒスパニック系不法移民は大半が国境を越えて不法入国したのに対し、アジア人は飛行機で来て観光ビザで入国し、その後にビザの期限が切れたケースが多い。21歳のユンさんは両親が定住していたアルゼンチンで生まれ、01年に同国からロサンゼルスに来た。一家の稼ぎ頭である母親は店員だ。ユンさんはUCLAに入学するために民間の奨学金をかき集めた。現在は同校の不法滞在学生のグループで活動している。

 「友達はみな海外で学んでいるのに、わたしはここから動けない」とユンさんは話す。米国を離れた場合、再入国できない恐れがあるためだ。「合法的な移民になって世界を見られるようになる日が待ち遠しい」という。

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