<ユニクロの影>
いよいよ契約ラッシュが始まる。
プロゴルファーの松山英樹(21=東北福祉大4年)がダンロップスポーツと用品使用契約を結んだ。契約内容はボール、クラブ、グローブ、バッグ、キャップ、シューズ。ウエアは本人の希望もあり東北福祉大のユニホームを継続して着る。契約金は3年9億円+インセンティブ(金額は推定)だ。
ソフトモヒカンスタイルで会見場に現れた松山は「クラブ、ボールも自分のイメージにピッタリ。世界で戦っていくために最も信頼できる道具だと思う。メジャー制覇の目標に向かって進んでいきたい」と語った。
松山のマネジャー役でもある東北福祉大の阿部監督は記者に囲まれると、ウエア契約が除外されている点を質問され、こう言った。
「所属が1年間、学生であって東北福祉大の所属であり、本人がユニホームを着てくれること、そしてウエアの方もたくさん(メーカーから)オファーをいただいて、いまあわててバタバタ決めるよりも、じっくりダンロップさんなり、各メーカーに了解を得たうえでの契約をさせてもらったというのが事実です。これからじっくりウエアも考えていきたいと思います」
松山が今回、契約項目からウエアを外したのは、カジュアル衣料大手の「ユニクロ」からオファーを受けているからだ。来年早々にもウエア単品、もしくは所属契約を結ぶとみられている。ユニクロはテニスの錦織圭(23)と2011年から5年総額10億円+インセンティブ(推定)の契約を結んだ。仮に松山が同社と5年間の所属契約となれば、「契約金は5年総額15億円」との声もある。
石川遼が08年にプロ転向すると、同年だけでヨネックスやパナソニック、全日空、トヨタ自動車など、計13社と契約。契約金の総額は25億円を超えた。
その石川は今季から米ツアーに主戦場を変えて、予選落ちを繰り返すばかり。すっかり落ち目の同級生を尻目に松山は、4月のプロ転向後、すでに2勝。全米オープンでも10位に入り、先週のミズノオープンで初めて予選落ちするまで、出場7試合連続でトップ10入りの快進撃を続けファンの心を掴んだ。
<マキロイは10年200億円>
あるツアー関係者は今回のクラブ契約を機に「スポンサー契約が続々と決まるでしょう」と言って、こう続ける。
「さわやかでしゃべりがうまかった石川とは違うものの、松山は日本人初のメジャー制覇を期待される大物だけに、スポンサーになるメリットは大きい。阿部監督は、『クラブが最優先』と言い続けてきた。サングラスが1週間早くなったが、クラブに続いて、すでにオファーは殺到しており、航空会社やサプリメントメーカー、通信会社との契約が近日中に決まるはずです」
さらに、ある広告関係者がこう語る。
「早期の契約が噂されるユニクロは、4月のマスターズに優勝したA・スコットともグローバルアンバサダー契約を結んでいる。スコットのウエアの胸にはユニクロの他にベンツのマークがある。メルセデス・ベンツは昨年から、日本女子プロゴルフ協会のオフィシャルスポンサーになって女子プロを応援しているが、日本の男子プロとは誰とも契約していない。その1番手は松山と言う者もいる。いずれにしても、今後は松山の契約決定のニュースがスポーツ紙を賑わすことになるでしょう」
ゴルフ界の高額契約といえば、昨季、米ツアー、欧州ツアーで賞金王になったローリー・マキロイ(24=英国)が今年、ナイキと10年2億ドル(約200億円)の大型契約を結んだ。22歳で11年の全米オープンに優勝。昨年は全米プロにも勝った。ナイキは「最も将来が期待される若手選手」といわれるマキロイへの高額投資を決断した。
松山はアマチュア時代にはマスターズに2年連続出場し予選通過。ローアマも取った。先の全米オープン最終日のプレーを見れば、マキロイとメジャー優勝を争う日が来るのも遠くはないかもしれない。広告塔と化した松山はゴルフ以上に商談が忙しくなる。
(日刊ゲンダイ2013年7月2日掲載)