(セ・リーグ、阪神4-6中日、12回戦、6勝6敗、1日、甲子園)重苦しい敗者の通路で鳥谷の声が響いた。真っすぐ前だけを見つめ、クラブハウスへ歩みを進めた。ゲーム差がどれだけ離れようが、優勝を目指す気持ちは変わらない。2日からの巨人3連戦に向け、普段はクールな男が熱い思いをはき出した。
「勝つしかない。やるしかない。先制というより、どの場面でも点をとれるように頑張ります」
この発言が表すように敗戦のなか、ダイヤモンドを駆け巡る姿はキャプテンとしての意地に映った。象徴的なシーンは同点の三回一死二塁の好機だ。直前の俊介が犠打を決めれず、最後は三振に倒れ、沈みかけたムードを振り払った。相手先発・山本昌の初球だ。
「ひと振りで仕留めようという意識はしていない」と自然体で甘い122キロのスライダーに反応。右前に痛烈なライナーで弾き返した。一時は勝ち越しとなるタイムリー。七回にも右前打を放ち、マルチ安打を記録した。これで、9試合連続で「H」マークを灯した。