夏休みに入って１０日余り、休みを満喫する子どもらの笑顔にしばしば出会う。わが身を振り返り「しっかり楽しんでおくんだよ」と声を掛けたくなる。

　長い休みは地域の宝に触れる好機でもある。先の日曜、薩摩川内市新田神社の御神鏡（みかがみ）清祭（すましさい）をのぞいた。神社所蔵の銅鏡を幼稚園児が和紙を巻いた小縄で磨く。鏡のように曇りのない心に育つことを願った神事だ。懸命に鏡をこする姿に心が洗われた。

　神社の銅鏡７３面の半数は中国大陸や朝鮮半島などから渡ったとされる。中国は宋、元、朝鮮は高麗朝時代というから、古いものは８００年前後受け継がれていることになる。

　鏡の古里の国との間に不穏な空気が漂う。日本は今月、中国公船による相次ぐ領海侵入を非難する防衛白書を発表した。先日は中国軍機が「第１列島線」を越えて沖縄本島と宮古島の間を通過し太平洋まで往復した。

　サッカー東アジア・カップ男子日韓戦では韓国応援団が歴史問題に関して日本を非難する横断幕を掲げ、日本側応援席の一部に、韓国で「侵略の象徴」とされる旭日旗が揺れたという。掛け違えたボタンはなかなか元に戻せない。

　あすから８月。６８回目の慰霊の夏が巡ってくる。かの国でも先祖をしのぶ思いは同じだろう。同じ人として互いの主張を受け止め「明鏡止水」の心で話し合うのは難しいだろうか。無心に鏡を磨く無垢（むく）の子らのためにも。