世田谷区民、ご当地ナンバーに反対　２３人提訴

　東京都世田谷区が「ご当地ナンバー」として国に申請した「世田谷ナンバー」の導入に反対する区民２３人が１日、「区民の合意を得られていない」などとして、国に対して承認の差し止めを求める訴えを東京地裁に起こした。主に地域振興を目的とするご当地ナンバーは、地元で歓迎されるのが通例で、反対派による訴訟が起きたのは全国で初めてだ。

　国を訴えたのは「世田谷ナンバー新設を反対する会」代表の飲食店経営・高木徹さん（４６）。訴状では「世田谷区は住民の約８割が賛成、としているが、アンケートの回答者の４割近くは免許を持たず、７割以上が６０歳以上の高齢者で偏りがある」と指摘した。

　区のアンケート結果には真の区民の声が反映されていないと感じた高木さんが独自調査した結果、現状の「品川」ナンバーの維持を望む声が圧倒的に多かった。「品川ナンバーのブランド価値にひかれて住民票を移した人もいる」と高木さん。「反対する会」には「慣れ親しんだ歴史のある品川ナンバーを世田谷ナンバーに変えたくはない」という声も寄せられたという。

　さらに世田谷区に住んでいることが特定されることによるプライバシー侵害を恐れる声も。高木さんは「５８平方キロメートルという狭い世田谷区内には富裕層や著名人が多く暮らしています。特定されて喜ぶ人もいるでしょうが、嫌がる人の方が多いでしょう」と指摘する。現在、単独市町村のナンバーは愛知・豊田市（９１８平方キロメートル）、仙台市（７８８平方キロメートル）、山口・下関市（７１５平方キロメートル）、堺市（１５０平方キロメートル）、愛知・一宮市（１１４平方キロメートル）の５市。いずれも世田谷区よりケタ違いに広い。

　世田谷区と同時に杉並区もご当地ナンバーを申請し、現在の「練馬」ナンバーが「杉並」ナンバーに変わる予定だが、こちらは反対運動は起きていない。高木さんは「むしろ練馬ナンバーからの脱却を望む方の方が多いようです。事情が違うのでしょう」と話した。

　ご当地ナンバーは２０００～０８年に地域振興を目的に「富士山」「会津」など１９地域で導入された。今年２～６月に国土交通省が第２弾を公募。世田谷区など８都県１１地域が申請したが、世田谷区以外で反対運動はない。

　世田谷区は７月２６日に国交省で開かれた審査会で「区内の登録自動車数は都内最多（２０万３６３台）で世田谷ナンバーがあるのが自然。区民の大方の理解は得られている」と説明。８月中にも訴訟の審理を待たずに承認されてしまう恐れもあるが、高木さんは「粘り強く区民に訴えかけていく」と話している。

　◆東京都のナンバー　現在は「多摩」（約９２万台）、「足立」（約８４万台）、「品川」（約８１万台）、「練馬」（約７５万台）、「八王子」（約４２万台）の５種類（台数は２０１２年現在。各運輸支局のデータによる）。「品川」には中央区、港区、品川区、大田区、千代田区、渋谷区、目黒区、世田谷区の８区と大島支庁、三宅支庁、八丈支庁、小笠原支庁が含まれる。

（2013年8月2日06時02分スポーツ報知）