93年の米アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いたクリント・イーストウッド監督(83)の名作を時代劇にリメークし、俳優・渡辺謙(53)が主演した映画「許されざる者」(李相日監督、9月13日公開)の完成報告会見が1日、都内で行われた。先日、作品を見たというイーストウッド監督は「素晴らしい出来で、非常に満足」と絶賛のメッセージ。渡辺は「クリントの心に届いた」と感無量の様子だった。
イーストウッド監督のメッセージに会場がくぎ付けとなった。「私も作品を拝見し、素晴らしい出来で、非常に満足しています」「日本映画の新たな時代の幕開けを感じました」「私の大事な友人である渡辺謙も、素晴らしい演技を見せてくれました」。これ以上ない絶賛コメントだった。
7月中旬、編集の最終段階にある作品が一足早くイーストウッド監督の元に届けられた。スケジュールの都合で渡辺や監督が試写に立ち会うことはできなかったが、作品に込めた思いは伝わった。
メッセージを聞いた渡辺は「決して言葉が多い人じゃないのに、こうして感想を述べてくれたのがうれしかった」と感無量の様子。イーストウッド監督の作風は踏襲しつつ、日本ならではのオリジナル作品を目指していただけに「自分たちの映画を深く受け止めてくれた、と感じた。クリントの心に届いた。頑張ってよかったなと思う」と声を弾ませた。
李監督も「実感が湧かない。映画界の神様みたいな人。居合わせたら信用できたんだろうけど…。ねつ造されてないかな」と冗談交じりに話し、「とにかく必死だった。それは伝わったと思う」と喜びをかみしめた。
同作は93年の米アカデミー賞で4部門を獲得した名作のリメーク。時代は米版と同じ1880年、舞台は徳川幕府崩壊後の北海道。貧困の末、一度は足を洗った賞金稼ぎとして再び戦いに身を投じていく男(渡辺)の姿が描かれる。撮影は昨年、北海道で行われ、氷点下10度の雪の中でのロケも敢行。ヒグマにも遭遇したという。渡辺は「肉体的にも精神的にも今までで一番つらかったかもしれない」と苦笑いだ。
作品はベネチア国際映画祭の特別招待作品に選出された。9月6日の上映に2泊4日の弾丸ツアーで駆け付ける予定の渡辺は「どう伝わるか楽しみ。海外の映画ファンにも必ず届くと思う。北米や欧州に広く見てもらえるきっかけになれば」と世界公開に期待を寄せた。
◆クリント・イーストウッド監督談話(抜粋)
かつて、私は黒澤明監督の「用心棒」に感動し、「荒野の用心棒」に出演したのを思い出します。そして今、日本映画界の最高のスタッフとキャストが、私の「許されざる者」に感銘を受けてくれたことにも何か深い縁や絆を感じざるを得ません。作品を拝見し、素晴らしい出来で、非常に満足しています。
日本を舞台に、滅びゆく者たちの生きざまを壮大に描いただけでなく、激しくも美しい魂が詰まっているこの作品に日本映画の新たな時代の幕開けを感じました。私の大事な友人の渡辺謙も素晴らしい演技を見せてくれました。日本映画界、そして世界の映画の歴史に残る素晴らしい作品になることを期待しています。
[2013/8/2-06:04 スポーツ報知]