【ＢＯＸ】和毅、ＷＢＯ日本人１号王者！亀田３兄弟世界獲った！

ＷＢＯバンタム級世界戦で判定勝ちし、父・史郎さんに肩車されて雄たけびを上げる新王者の和毅（共同）

　◆プロボクシング世界戦　ＷＢＯ世界バンタム級タイトルマッチ　○亀田和毅（判定３―０）パウルス・アンブンダ●（１日、フィリピン・セブ　ウォーターフロント・オブ・シティーホテル＆カジノ）　涙の世界奪取や！　亀田３兄弟の末弟で同級５位の和毅（２２）＝亀田＝が、２０戦無敗の王者パウルス・アンブンダ（３２）＝ナミビア＝を３―０の判定で破り世界初挑戦でベルトを手にした。日本人としては８人目の海外奪取。３階級制覇の長男・興毅（２６）、元ＷＢＡ世界フライ級の次男・大毅（２４）に続く３兄弟世界王者は史上初の快挙。４月に国内で認定されたＷＢＯの第１号王者にも輝いた。和毅の戦績は２８戦全勝（１８ＫＯ）、初防衛に失敗したアンブンダは２０勝（１０ＫＯ）１敗。

　亀田家の最終兵器が、栄光をつかんだ。和毅は終了のゴングに勝利を確信した。コーナーに駆け上がり両拳を突き上げ、言葉にならない魂の絶叫だ。決定打こそなかったが、フットワークを使い左からの高速連打や接近戦でのボディーを王者に浴びせた。最大８ポイント差の３―０の圧勝。勝利のアナウンスが響くと、号泣し跳びはねて喜んだ。

　泣いて抱き合う興毅、大毅、父・史郎氏（４８）ら家族の中心で、日本人第１号となるＷＢＯ王者のベルトを腰に巻いた。「このベルトはずっと支えてくれたオヤジ（史郎さん）に渡したい。小さいときから亀田家の夢だった３兄弟で世界王者になれた」。自らの暴言問題で国内でのセコンドライセンスが取り消されている父だが、海外ではセコンドについてもらい力水をもらった。「よう頑張った！」と父から頬にキスされ、和毅は「最高のオヤジに最高の恩返しができた」。その言葉に父は大粒の涙を流した。「俺も自分自身を褒めてやりたい」。３兄弟を世界王者に育てた感触をかみしめた。

　８歳から始めたボクシング。２人の兄以上の逸材と評価された。「将来は軽量級で世界王者」と期待され、成長期に「伸びるな、伸びるな」と、父に頭を押さえつけられ育てられた。だが、３兄弟で１人だけ身長１７０センチ超え。選手層の厚いバンタム級が主戦場となり、２人の兄より世界挑戦が遅れた。

　１６歳の夏、精神面の弱さの克服に単身メキシコ市に送り込まれた。寂しさから毎晩泣いて家族に電話をしてきたが、克服した先にはメキシコ人のガールフレンドをちゃっかり作るほどたくましくなって帰ってきた。

　中立地帯のセブで強行した興行は数千万円の大赤字になった。ＷＢＡ王者の興毅との肉親対決はタブーで、ＷＢＣ王者・山仲慎介（帝拳）への挑戦は時期尚早と判断。４月に日本で承認されたＷＢＯをターゲットにしたが、国内での世界挑戦は「東洋太平洋か日本王座の獲得選手などに限る」という内規があるため、海外挑戦に踏み切るしかなかった。

　「２２歳で（世界奪取は）早いねんけど、長かったなぁ」。和毅は歩んできた忍耐の道のりをかみしめた。次戦は指名試合（１位挑戦者との防衛戦）が濃厚。来年の誕生日前にはスーパーバンタムで２階級制覇も狙う。兄２人から受けたバトンを手に「俺の時代」が始まる。

　◆世界の兄弟王者　日本ボクシングコミッションの調べによると、兄弟での世界王者は過去に２８組で、３兄弟以上では例がないという。世界初は、１９０７年のサリバン兄弟（米国）で、１９０５年の弟ジャックのミドル級獲得に兄マイクが続いた。国内では１０年２月の興毅、大毅の亀田兄弟が初めて。

　◆ＷＢＯ（世界ボクシング機構）　１９８８年設立。本部はプエルトリコ。ベルトは茶色。６５か国が加盟（３月末時点）。９０年代に元６階級王者デラホーヤ（米国）がＷＢＯスーパーフェザー級から王者のキャリアをスタートさせて広く認知された。主な現役王者はＷＢＡ、ＩＢＦ、ＷＢＯ統一ヘビー級王者ウラジミール・クリチコ（ウクライナ）。日本では従来のＷＢＡとＷＢＣに加え、今年４月からＩＢＦとともに解禁された。４団体の間に実力差はない。４月以降、ＷＢＯ世界戦に初めて挑んだ日本人は、７月にスーパーミドル級王者スティーグリッツ（ドイツ）と対戦し、１０回ＴＫＯで敗れた清田祐三（フラッシュ赤羽）。