ユダヤ系団体:ナチ戦犯の情報提供を…独でキャンペーン
毎日新聞 2013年08月01日 21時21分(最終更新 08月01日 21時35分)
【ベルリン篠田航一】ユダヤ系人権団体サイモン・ウィーゼンタール・センター(本部・米ロサンゼルス)が、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に関与しながら、まだ訴追されていない戦争犯罪人の情報提供を呼びかけるキャンペーンをドイツで開始した。戦後68年が経過し、戦犯の多くが死亡または高齢化して追跡が困難になる中、同センターはここ数年を「戦犯発見の最後のチャンス」と位置付け、懸賞金も用意して情報を求めている。
同センターは、ベルリンなどの大都市で「遅いが、まだ遅すぎない。最後のチャンス」と記したポスターを計2000枚張り、虐殺に関与した人物の発見を呼びかけ始めた。訴追につながった情報の提供者には、最高2万5000ユーロ(約330万円)が支払われるという。
ナチス追跡の著書もあり「最後のナチ・ハンター」と言われる同センター・イスラエル事務所長のエフライム・ズロフ博士(64)は7月23日にベルリンで記者会見し、「戦後は別の人生を歩み、既に年老いた人を訴追することに意味があるのかとよく聞かれる。だがおぞましい大量殺人の罪は時の経過で消えるものではない。高齢でも出廷に耐えられるなら、必ず法の裁きを受けさせる」と強調し、「もう時間がない」と訴えた。
1979年、ドイツ(当時は西独)はナチス戦犯訴追のため謀殺(計画的殺人)の時効を廃止。2011年5月、強制収容所の看守を務めたウクライナ出身の被告(当時91歳、12年に死亡)に有罪判決が出たのを機に、戦犯の法的責任を追及する声が改めて高まっている。同センターによると、01〜12年に世界各国で有罪判決を受けたナチス戦犯は計99人。最も多いのはイタリアの44人で、米国39人、ドイツ6人、カナダ6人と続く。
各国が最重要人物として追跡したのが、ユダヤ人約13万人の収容所移送に関与し、戦後はシリアに逃亡したアロイス・ブルンナー元ナチス親衛隊員。だが同センターは「現在までシリア政府は捜査に協力してくれない。1912年生まれのブルンナー元親衛隊員の生存可能性はもはや低い」と分析している。