麻生副総理:ナチス発言、官邸火消しも後手…政権に痛手
毎日新聞 2013年08月01日 20時50分(最終更新 08月01日 22時36分)
麻生太郎副総理兼財務相は1日、憲法改正に関連しドイツのナチス政権を引き合いに「あの手口、学んだらどうかね」と講演で述べたことについて「誤解を招く結果となった」として撤回した。批判が海外に広がり首相官邸は火消しに動いたが、後手に回った感は否めない。菅義偉官房長官は1日の記者会見で「(麻生氏の)辞任にはあたらない」と強調したが、野党は徹底追及の構えで、安倍政権にとって痛手となった。
菅氏は会見で「安倍内閣としてナチス政権を肯定的にとらえることは断じてない。わが国は戦後一貫して、平和と人権を徹底して擁護する社会を築き上げ、国際社会に貢献してきた」と沈静化に努めた。
首相官邸は当初、「麻生副総理が答えるべきこと」(菅氏)と静観していたが、米国のユダヤ系人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が抗議声明を出し、中国、韓国両政府も批判のコメントを発表したことから、動かざるを得なくなった。菅氏は7月31日、福岡県内にいた麻生氏に電話で「誤解を受ける状況になっている」と対応を促し、菅氏から報告を受けた安倍晋三首相も「(撤回は)早い方がいい」と語った。
参院選での自民党大勝を受け、首相が7月23日の閣僚懇談会で、「これから引き締めて頑張っていこう」と指示した直後の麻生氏の発言。首相には、第1次安倍内閣で閣僚の不祥事が相次ぎ、政権が失速した苦い経験もある。自民党幹部は「言っていいことと悪いことがある」と不快感を示し、公明党の山口那津男代表も1日の会見で、「枢要な立場にある政治家は発言に重々配慮することが重要だ」と苦言を呈した。
麻生氏は発言を撤回したコメントで「喧騒(けんそう)に紛れて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまったあしき例として挙げた」と釈明したが、「手口を学んだら」という発言と「あしき例」は矛盾しており、国際的な理解が得られる保証はない。韓国外交筋は「波紋が広がったので撤回したのだろうが、どこにも通じない発言だ」と指摘した。