【後藤洋平】「その日、何をしていたのか、全く覚えていない」。戦後日本を代表する政治学者の丸山真男(1914〜96)が、広島での被爆体験を語った録音テープが確認され、広島平和記念資料館(広島市中区)にコピーが寄贈された。
丸山は東京帝大助教授になったが、太平洋戦争が始まると、軍に召集された。原爆が投下された45年8月6日の時点では、広島の陸軍暁部隊情報班の1等兵だった。テープは、中国新聞記者だった故林立雄さんが69年、東京都内でのインタビューを録音したもの。
証言は約2時間にわたる。丸山は、爆心地から約4・5キロ南にある広島市宇品町(現・南区)の司令部で被爆時の様子を「突然、目がくらむほどの閃光(せんこう)が走った。参謀の軍帽がプーッと飛んだ」と描写。巨大なきのこ雲や傷ついた市民たちの様子のほか、被爆翌日に「原爆を投下した」と伝える米国の短波放送を傍受し、上司に報告したエピソードも明かしている。