ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
inside Enterprise
【第894回】 2013年7月29日
著者・コラム紹介バックナンバー
週刊ダイヤモンド編集部

論文効果で300億~400億円販売上乗せ!?
改ざんで問われるノバルティスの説明責任

1
nextpage
改ざんが発覚したディオバンの臨床研究の結果をうたったノバルティスのニュースリリース。今はホームページから削除されている
Photo by Takeshi Yamamoto

 ディオバン論文問題は、最悪の方向に向かっている。

 スイスの大手製薬会社、ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン(一般名:バルサルタン)」について同社社員(当時、現在は退職)が、京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5大学の医師主導の臨床研究に、関与していたことが発覚、論文の信用性に疑いが生じているのだ。

 この社員は、5大学いずれの臨床研究でも、製薬会社の身分を開示せず、非常勤講師だった大阪市立大学の肩書でデータ解析の専門家として参加。特に、京都府立医科大学では、データ解析を担当していた。ノバルティスの元社員によるデータの不正操作があるか否かが大きな焦点だった。

 7月11日、京都府立医科大学は調査結果を発表。臨床研究によるカルテと解析用のデータの間に相違が見られ、最終的な解析用データに「何らかの人為的な操作が行われた疑いがある」と報告。脳卒中などのリスク抑制効果について、ディオバンに有利なデータ操作が行われていた。

 だが、肝心の「誰がデータ操作をしたのか」は特定できず、改ざんが意図して行われたかどうかさえも確認できなかった。

 その大きな要因は「退職した元社員の強い意志により実現しなかった」というノバルティス側の理由により、大学側が元社員に直接ヒアリングできなかったためだ。

 既にノバルティスは、6月3日付けで元社員へのヒアリングやメールの記録などの内部調査によって、「データの意図的な操作や改ざんを示す事実はなかった」と発表している。この発表が正しいのならば、本来はやましいことがないのにも関わらず、元社員は協力を拒んだことになる。

 これはデータ解析できる人間が限定されていることから、元社員によるデータ改ざんの疑いを強めている大学側とは、明らかに相反するものだ。かえってノバルティスに対する疑惑と不信感を増幅させる結果となった。

1
nextpage
Special topics
ダイヤモンド・オンライン 関連記事


DOLSpecial

今週の週刊ダイヤモンド

2013年8月3日号

週刊ダイヤモンド最新号

定価690円(税込)

週刊ダイヤモンドのサイトへ
特集

ヘッジファンドが仕掛けるバブル相場

      
  • Prologue ヘッジファンド&ワールドマネー
  • Part 1 ヘッジファンドは知っている
  • 図解 相場第2幕のイベントマップ これが「ビッグピクチャー」だ!
  • 先進国買いという出来レース テーマパーク化する世界経済
  • Column ヘッジファンド緊急アンケート 日本株買いのスタンスは不変
  • Interview ジム・ロジャーズ●投資家
  •   
  • Part 2 ヘッジファンドの正体
  • ヘッジファンドって何者!? 謎の手口と仕組みを徹底解説
  • Column 高リスクで秘密主義の攪乱者? 世間が抱く四つの思い込み
  • 覆面座談会 邦銀、英HF、官邸の危うい蜜月
  • Column 超学歴社会の海外ファンド 日米の報酬格差は100倍
  • 苦境続く和製ヘッジファンド 新世代台頭には改革が不可欠
  •   
  • Part 3 外国人投資家に学ぶ最新投資術
  • 外国人投資家が方針転換 買い増し/売りの最新銘柄
  • 一流機関投資家のすごい運用 海外年金はリスク資産を重視
  • ヘッジファンドに対抗? 絶対リターン狙いの新戦略
  • Column 日本国債の暴落で大儲け? ブラックスワン系Fの裏側
underline

週刊ダイヤモンド1冊購読

話題の記事

週刊ダイヤモンド編集部


inside Enterprise

日々刻々、変化を続ける企業の経営環境。変化の中で各企業が模索する経営戦略とは何か?『週刊ダイヤモンド』編集部が徹底取材します。

「inside Enterprise」

⇒バックナンバー一覧