12月25日、複数の関係筋によると、自民・公明両党は、民主党政権が財政健全化の指針として定めた「中期財政フレーム」を来年7月の参院選後に再検証することが明らかに。写真は自民党の安倍総裁(2012年 ロイター/Issei Kato) |
[東京 25日 ロイター] 複数の関係筋によると、自民、公明両党は、民主党政権が財政健全化の指針として定めた「中期財政フレーム」を来年7月の参院選後に再検証する。しかし、同フレームにある「歳出の大枠71兆円」と「新規国債発行44兆円」を撤回すれば、政府が国際公約としてきた2015年度の基礎的財政赤字半減目標が崩れかねない。
来年10月の消費税引き上げ最終判断を控え、歳出削減で新たな仕組みを設けることができるかが、財政再建に対する新政権の本気度を試す試金石になりそうだ。
<財務省は13年度当初「44兆円」枠に腐心、補正規模は膨張気味>
「中期財政フレーム」は一般会計の当初予算を対象としており、補正予算との関係は明確化されていない。このため、当初予算の歳出や国債発行の歯止めにはなっているが、補正予算で国債が増発されれば、財政健全化の「しり抜け」になると指摘されてきた。もっとも「中期財政フレーム」の基本理念を示した「財政運営戦略」には、「財政健全化への取り組みは景気変動に対する柔軟性を有すべきである」との景気弾力条項があり、経済情勢に応じて補正予算で当初のフレームを突破することを容認している。
26日に発足する安倍政権は、補正予算編成について、10兆円規模を軸に調整を進めている。国債発行を必要としない財源の余地は3兆円─4兆円程度にとどまり、「(補正後)44兆円突破」(財務省筋)は必至の情勢だ。
公明党の山口那津男代表は足元15兆円程度の需給ギャップがあるため、同党として10兆円の補正規模を提案したと説明。安倍晋三自民党総裁は23日のフジテレビ番組で「デフレギャップを埋めるのに十分な額が必要。加えて1─2か月予算成立が遅れる間に暫定予算を組むが、その遅れ分も手当する必要がある」と述べている。財務省は、来年度当初予算で「44兆円」を守るためなら、補正予算規模が拡大してもやむを得ないとの立場だが、規模は膨らむ一方で、着地点はまだ見えない。
<13年度予算は現行フレームで編成、見直しは消費増税判断にらみか>
新政権は今のところ、2013年度予算は現行の「歳出の大枠71兆円・新規国債発行44兆円以下」を基本に編成する方針だ。ただ、自民党は政権公約に2、3年は「より弾力的」な経済財政運営を推進すると明記。財政再建より景気回復を優先させる姿勢を明確にしており、毎年夏に改訂されてきた「中期財政フレーム」の見直しも、こうした議論のなかで浮上している。
安倍新政権の官房副長官内定が伝えられる加藤勝信総裁特別補佐は21日、ロイターのインタビューで、中期財政フレームについて「今すぐにというのではなく、いろいろ検証する必要がある」と述べ、再検証の必要性に言及した。
続けて「財政健全化の大きな目標をしっかり掲げていくことに変わりない。現行の目標(15年度赤字半減と20年度の黒字化)を堅持しながら、検証していくことが必要になっていく」とも語り、中長期の目標を堅持する姿勢も示した。ただ、15年度の赤字半減目標達成は「来秋の消費税引き上げ判断が前提となっている。仮に景気が悪化し(消費増税が)できなくなると飛んでしまう。それも含めて弾力的に考えていく必要がある」とも語り、参院選後に、14年度予算編成に向けて判断していく考えを示した。加藤氏は13年度予算について「基本、71兆円と44兆円に則って対応する」と明言したが、「弾力的な要素はある」とも語り、13年度の補正予算にも含みを残している。
先進国で最悪の財政状況にある日本が財政健全化目標達成年次を先送りすれば、国債金利上昇、日本国債の格下げとなって跳ね返ってくる可能性もある。他方、来秋には消費税引き上げの最終判断が迫り、経済状況が増税に耐えられなければ、目標達成のための歳出削減に踏み込むことも厳しくなる。26日に誕生する安倍政権にとって大きな関門になりそうだ。
(ロイターニュース 吉川裕子;編集 石田仁志)