12月21日、自民党の加藤・総裁特別補佐は、日銀が次回決定会合で結論を出す予定の物価目標の見直しについて、新政権の緊急経済対策とパッケージで打ち出せれば政策効果が上がると語った。写真は2010年4月、都内で撮影(2012年 ロイター/Issei Kato) |
[東京 21日 ロイター] 自民党の加藤勝信総裁特別補佐は21日、ロイターのインタビューに応じ、日銀が1月21─22日の次回決定会合で結論を出す予定の物価目標の見直しについて、1月11日をめどにまとめる新政権の緊急経済対策とパッケージで打ち出せれば政策効果が上がると語った。
個人的な意見で確定したことではないとしながらも、日銀に対し、臨時の金融政策決定会合における前倒しの対応にも期待感を示した。
物価目標の見直しでは、自民党として主張してきた「物価目標2%」を明確にすることを期待。その上で、政府・日銀間で政策協定(アコード)を結び、日銀には政策実現に向けて大胆な金融緩和を期待すると語った。自民党の政権公約に盛り込まれた日銀法改正については「目的ではなく手段だ」と指摘し、日銀が十分な対応を行えば、日銀法改正の必要はないとの認識を示した。
加藤氏は安倍晋三自民党総裁の側近の1人で、26日にも発足する安倍内閣の政務の官房副長官への起用が固まったと複数の新聞が報じている。
インタビューの概要は以下の通り。
──日銀が追加金融緩和と物価目標の見直しに着手することを決めた。
「自民党が選挙戦で訴えてきたことを正面から受け止めて検討していただき、1月の決定会合までに結論を出すということで大変歓迎している。検討結果に期待する」
──物価目標の設定や政策協定で期待することは。
「物価目標2%を明確にしていただき、政府・日銀間で合意し、(日銀には)実現に向けて大胆な金融緩和を期待する」
──日銀決定会合案件となる政策協定についても早ければ1月の日銀決定会合時を期待するのか。
「議論はこれからだが、極端なことを言うと、1月中旬、11日めどに緊急経済対策を打ち出していかなければならない。補正予算に間に合わなくなる。できれば、そのタイミングで日銀が対応してくれると全体のパッケージとしてより一層効果がある」
──臨時の金融政策決定会合を開いて決定することも期待するのか。
「緊急経済対策と合わせるタイミングで、そういうことができてくれば、より一層、対策効果が高まる。そう思うが、日銀の決定会合の話(案件)であり、次回会合は下旬だが、下旬でなければならないということではないだろう。ただ、それがずれたとしても、パッケージでできれば進めていきたい」
──経済対策とパッケージで進めるのは、物価目標2%の設定と政策協定でよいか。
「盛り込められるといい流れになると思うが、日銀の事情もある。確定的なことではない。そういうことも含めて、日銀の覚悟を期待していきたい」
──政権公約に盛り込まれた日銀法改正については。
「日銀法改正は目的ではなく手段だ。今の状況でわれわれが主張してきていることに対応してもらえるなら、あえて変える必要はない」
──新政権への期待で1ドル84円前後まで円安が進んでいる。今後の円高是正策は。
「それは水準の議論になる。少なくとも、欧米先進国と同じ物価目標を持ち、同じような金融緩和を行ってもらいたい。リーマン・ショック後の欧米における一段の金融緩和と日銀の対応に違いがあったことが、大きく円高に振れた要因ではないか。それがデフレを引き起こし経済低迷や地方の疲弊につながっている」
──12年度補正予算は真水10兆円規模を軸に調整されているが、税収の上振れを除く財源余地は2兆円から3兆円程度。国債増発はやむを得ないとの認識か。
「10兆円ありきの議論ではない。中身だ。もちろん規模もアナウンスメント(効果)のひとつだが、そのために、平成25年度(2013年度)当初予算を(12年度補正に)ずれ込ませるだけでは政策効果がない。今回の緊急経済対策の施策は、まずは円高・デフレ(対応)で金融緩和をしてもらいたい。合わせて景気刺激を行う。民間経済が縮小しており、民間の投資活動や消費を刺激する施策を積み上げていかなければ、ばらまき批判を受ける」
──中期財政フレームの「歳出の大枠71兆円」と「新規国債発行44兆円」の見直しについて。
「71兆円や44兆円は、財政健全化目標に向けての手段だ。目標自体が今の経済情勢でどうなのかということも含めて実現可能なものにしていかなければならないとの意識はあるが、それは今すぐにというのではなく、いろいろ検証する必要がある。平成25年度(2013年度)予算までには間に合わない。平成25年度予算は、基本71兆円と44兆円に則って対応する。ただ、弾力的な要素はある」
──「71兆円と44兆円」枠が撤回されると、2015年度の基礎的財政赤字半減目標が崩れる。財政健全化目標はどう考えるのか。
「それ(15年度の赤字半減目標達成)は来秋の消費税引き上げ判断が前提となっている。仮に景気が悪化し(消費増税が)できなくなると皆飛んでしまう。それも含めて弾力的に考えていく必要がある」
「ただし、財政健全化の大きな目標をしっかり掲げていくことに変わりない。現行の目標(15年度赤字半減と20年度の黒字化)を堅持しながら、検証していくことが必要になっていく」
(ロイターニュース 吉川裕子 金子かおり)