最後に、最近でている軽減税率の議論が酷いことにも言及しよう。軽減税率とは、食料品などの特定物品に低い税率を導入して、低所得者対策をしようというものだ。ただし、軽減税率というのは品物の線引きが難しく、それは官僚の裁量権を大きくする。
消費税の軽減税率は、世の中のモノの数だけ「租税特別措置」があるようなものなのだ。天下り先を増やしたい官僚や、特定業界へ影響力を持ちたい政治家にとっては好都合だ。
欧州では、軽減税率にはこうした問題があるので、低所得者対策は「給付つき税額控除」に移行させようとする動きがある。歳入庁は、税と社会保険料を一体として徴収するので、低所得者対策として「簡素な給付措置」を行う上で、役に立つ。しかし、「簡素な給付措置」のかわりに、「軽減税率」を導入すれば、「簡素な給付措置」は不要となって、さらに歳入庁を作るには及ばずという議論になりかねない。