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高橋洋一の俗論を撃つ!
【第41回】 2012年6月14日
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高橋洋一 [嘉悦大学教授]

6・13 国会公聴会
私が述べた消費税増税反対の10大理由

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 こうした過去の教訓から、増税の前にデフレから脱却して、名目成長率を高くすることが重要になってくる。具体的には、プライマリー収支を改善するために、名目成長率を先進国並みに4~5%にしておく必要がある。ちなみに、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げたが、それ以来デフレが続き、税収は97年度の水準を下回っている。

財政再建の必要性が乏しい

 ②について、日本の場合、財政状況は財政当局がいうほど悪くなく、10年くらいで財政再建する必要性はあるが、急に行えばかえって財政再建自体ができなくなる。

 先進国各国の財政状態はどの程度深刻なのかについても、図表3のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の数字が一つの参考になる。これは各国政府が破綻した時に国債の損失をカバーするための保険料ともいえ、その国の国債の危険度に応じた数字になっている。

 米国0.4%、英国0.7%、ドイツ1.1%、日本1.0%、フランス2.2%、イタリア5.5%である(6月11日現在)。ポルトガル11.0%であるが、ギリシャは100%に近く事実上デフォルトだ。

 これら数字に単純化したイメージを与えるとすれば、米国は200年間、英国は120年間、ドイツ、日本は100年間、フランスは40年間、イタリアは20年間で、ポルトガルは9年間で、それぞれ1回程度のデフォルトということなる。これらの数字を見る限り、日本の財政状態は、日本経済の潜在力や政府資産の大きさなどから、欧州の国ほど深刻でない。欧州で緊縮政策が否定されている中で、日本が増税政策を採るべきではない。

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高橋洋一[嘉悦大学教授]

1955年、東京都に生まれる。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。主要著書に『財投改革の経済学』(東洋経済新報社)、『さらば財務省』(講談社)など。

 


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