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【静岡】

ネット中傷で業者を提訴 静大教授「投稿者開示を」

◆掲示板にウソ掲載

事実無根の中傷が書き込まれたインターネット掲示板

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 インターネット上の掲示板サイトに事実無根の誹謗(ひぼう)中傷を掲載され、精神的苦痛を受けたとして、静岡大教育学研究科の大宮康男教授(56)が、サイトを管理する通信会社「データホテル社」(東京都)に投稿者の個人情報開示と百五十万円の損害賠償を求める訴えを静岡地裁に起こした。

 訴状などによると、大宮教授は二〇〇七年七月〜〇八年十月、「静大タイムズ」という掲示板サイトに「セクハラ男」「女子学生を部屋に連れ込みいたずらをした」などと、自らに関する虚偽の情報を六回掲載された。

 静岡大では〇五年三月、別の男性教員が女子学生の体を触るセクハラ事件で懲戒停職処分を受けた。この教員は依願退職したが、所属研究科や年齢が同じだった大宮教授が、事件直後からネット上で犯人扱いされた。

 大宮教授は一一年から二回にわたり、発信者の情報を開示するよう通信会社に申し入れたが「名誉毀損(きそん)と判断できない」などと拒否されたという。七月十日、ネット上に情報が残る六件に関して提訴に踏み切った。

 大宮教授は「まったく事実無根の内容をインターネットで広められ、家庭が崩壊しそうにもなった。悪意ある投稿をした人を明らかにし、謝罪してもらいたい」と話す。同社の担当者は「情報収集中」と話している。

 「おまえがセクハラしたのか? なぜ大学を辞めないんだ」

 二〇〇四年の秋ごろ、大宮教授(当時は助教授)の自宅に知らない男から電話があった。身に覚えのない話に困惑したが、その後も自宅や大学の研究室に同様の電話が続いた。

 ほどなくして、同僚や友人からネット掲示板の存在を教えてもらった。「大宮助教授が女子学生に後ろから抱きついた」「早く大学から追放すべきだ」。事実無根の悪意の言葉が並び、大宮教授は「怒りで頭の中が真っ白になった」。家族を中傷する内容もあった。

 「今でも『研究室の学生がこの掲示板を見ていたら』と思うと、教え子たちの目が怖い」と話す。「名前を出さず、安全な場所に隠れて他人のことを傷つけるなんて許せない」。うその情報を投稿した本人を特定し、謝罪や賠償を求めることにこだわる。

 ネット上では、被害者への配慮や未成年が関わっているなどの理由で匿名発表された事件に関し、一般の利用者が情報を集め、個人の特定に至ることがしばしばある。大津市の中学校で昨年、生徒がいじめを苦に自殺した事件では、無関係の女性が加害者の母とされ、自宅に嫌がらせの電話を受けた。

 ネットと犯罪の関係に詳しい甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「ネット上では『悪いことをした人を懲らしめよう』という素朴な正義感によって、デマが瞬く間に広まることがある」と指摘。「個人が自由に発言するためには、匿名性を確保することが必要だが、具体的に他人を傷つけているケースでは、加害者を明らかにして責任を問うべきだ」と強調する。

 

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