「ここまでわかったPM2.5本当の恐怖」井上浩義著
【書籍・書評】
昨年末から今年春にかけて騒ぎとなったPM2.5という物質。日本気象協会が毎日発表している分布予測を見ると、今でも少なからず飛来していることが分かる。
井上浩義著「ここまでわかったPM2.5本当の恐怖」(アーク出版 1200円)では、この物質が人体にもたらす影響をあらためて明らかにしていく。著者は、1990年代からPM2.5の研究を行ってきた、第一人者といえる人物だ。
PM2.5のPは「パティキュレート=微粒子状」、Mは「マター=物質」を意味し、2.5は大きさを表す。つまり、PM2.5とは「大きさが2.5マイクロメートル以下の微粒子物質」ということ。その発生源は2つあり、黄砂に代表される土壌など自然由来のものと、工場の排煙や自動車の排ガスなど人為由来のものだ。
なぜ、PM2.5が問題となっているのか。その核心は、“非常に小さいこと”にある。人間の肺は、10マイクロメートルより大きい物質は異物として咳や痰と一緒に体外へ排出する機能を持つ。しかし、10マイクロメートル以下だと、気管の繊毛の中に入り込んで排除できない。吸い込まれたPM2.5は気管から肺に到達し、肺胞を破壊することになる。
さらに、食道から胃に入り、腸へと送られると、消化器系の疾患が起こり、血管に入れば血流を詰まらせて循環器系の疾患も発症させる。そしてこれらの影響が出るのは、数年先だという。
現在、PM2.5に対する薬はなく、疾患が表れてから治療を行うしかない。そのため、暴露しないことだけが予防法となっている。マスクなら、不織布のものを二重にすること、空気清浄機は換気量よりもフィルターの目の細かさで選ぶことが大切。その他、食事や運動による対策も紹介していく。