(cache) 古地図散歩　江戸城外堀を歩く！①

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2012-09-10

古地図散歩　江戸城外堀を歩く！①

東京町歩き

９月９日の日曜日は、東高円寺の喫茶店「散歩かふぇちゃらぽこ」が主催した「古地図散歩・江戸城外堀をあるく！」に参加してきた。実を言えば、このイベントは私が企画したもので、この日は解説も務めてきたのだ。

江戸城外堀は、江戸時代初期の徳川家康から家光の時代、幕府が各大名に「お手伝い普請」として建設させたもので、江戸城（現皇居等）の周囲を「の」の字型にめぐっていた。

現在はその多くの部分が埋め立てられているが、跡地にも現存部分にも、東京の日常の光景の中に多くの史跡が残されており、非常に魅力的な空間が続いている。

この日のイベント参加人数は２５人（ただし１人は幼児）。水道橋駅前に集合し、外堀の起点に向かう。

ここが外堀の起点である堀留橋。徳川家康が江戸入りした１５９０年ころ、江戸の町は南北に平川が流れていた。ところが平川は大雨が降ると氾濫し、城下が水浸しになる状態だった。そのため家康は城の北方を東西に神田川を掘削し、平川の水をこちらに流した。洪水対策となると同時に江戸城の外堀として北の防御にもなるという一挙両得である。

一方で神田川以南の平川は約５００ｍにわたって埋立てた。そこから先は水路として残し、ここから南を江戸城の外堀とした。その場所に架けられた橋が堀留橋である。現在は堀留橋よりも北に向かって日本橋川が続いており神田川と合流しているが、これは明治時代以降に水運の用に供するために再び掘削されたものである。

堀留橋から歩き始めてしばらく行くと、滝沢馬琴の旧居跡がある。現在はマンションの入口前に井戸跡の遺構がある。

さらに外堀（日本橋川）に沿って南下すると俎橋に出る。ここで私たちが遭遇したのは・・・

宇宙人？！？！

「寿星遊人」という福禄寿をモチーフにした像である。

雉子橋に来た。この場所は江戸城の内堀と外堀が近接し、２つの堀を結ぶ堀があった。雉子橋の名の由来は、中国から使者が来たときに彼らの好物の雉子を出してもてなすために全国から雉子が集められ、この橋の横に雉子小屋が造られたからだという。

ところで、この雉子橋を内堀側に渡ったところには・・・

ついに登場！

江戸城の石垣！！

と思ったら、じつはこの石垣・・・

真っ赤な偽物！

実はここにあるビルの危険物貯蔵倉庫として江戸城の石垣に使われていた石を積み上げたものである。

雉子橋から先は、内堀側（堀の内側）には本物の江戸時代の石垣が残っている。

これをたどって着いたところは一ツ橋。門の石垣の一部が残っている。この門の内側に屋敷があったのが徳川将軍家の分家の一橋家である。将軍家の跡継ぎがいなくなったときに将軍を出す家柄で、第１１代徳川家斉と第１５代徳川慶喜は一橋家から将軍となった。

一ツ橋も内堀と近接しており、すぐ近くに内堀の平川門が見える。

この平川門は江戸城の通用門であった。また不浄門とも呼ばれており、城内で死人や罪人が出たときはここから城を出た。浅野内匠頭も松の廊下で刃傷事件を起こした後、田村家屋敷に向かう途上で平川門を通っている。

一ツ橋の次に外堀の城門のあった場所が神田橋である。江戸時代初期、神田橋の内側には老中・大老を務めた幕府の実質的最高権力者の土井大炊頭利勝の屋敷があった。そのため神田橋には大炊殿橋という異名があった。この橋の上では寛永１８年（１６４１）に、小笠原家家臣内藤八右衛門が家臣９名とともに土井利勝の屋敷に使者に行く途中、４人の武士に襲撃されて殺害される事件が起こった。

大炊殿橋の仇討ちである。

発端はその２１年前に遡る。松江藩士多賀孫兵衛が恋をした。彼は恋の相手に何度も言い寄るが、相手にはすでに恋人がおり、孫兵衛を拒み続けていた。しかし孫兵衛はあきらめない。孫兵衛のしつこさに不安を覚えた恋の相手箕浦与四郎は、ついに恋人の内藤八右衛門に相談し、２人で孫兵衛を殺害してしまった。え・・・？

この三角関係

全員男かよ？！？！

ホモの三角関係がもつれて殺されてしまった多賀孫兵衛だったが、松江藩は箕浦家と内藤家は代々主家に仕えて功績が大きかったことから、与四郎と八右衛門を藩から追放する処分に留めた。２人は江戸へ行き、与四郎は土井家に、八右衛門は小笠原家に仕官した。与四郎はこの４年後、２０歳で早世している。

ところが収まらないのは孫兵衛の弟の孫左衛門と孫太夫である。２人は仇討ちを決意し、２人の助太刀とともに八右衛門を探して見つけ出し、八右衛門が土井家に使いに行くところを神田橋の上で待ち伏せたのである。

孫左衛門ら４人は２人ずつに分かれて橋の両端を押さえると八右衛門に斬りかかった。多賀兄弟に前後から斬りつけられた八右衛門は顔と背中に重傷を負って落馬し、そこを兄弟に滅多刺しにされて殺害された。八右衛門の家臣たち９人も４人から斬りつけられて７人が橋の上で死亡、２人は逃げたところを追ってきた孫左衛門ら４人に斬り殺された。

一方、多賀孫左衛門もこの乱闘で重傷を負い、まもなく死亡した。

この事件は多賀兄弟が事前に仇討免状を取得していなかったため、幕府の詮議を受けることとなったが、最終的には仇討ちと認められ、生き残った３人は放免されている。

このような事件があった神田橋だが、その端にはこのような像がある。