島耕作の「独自取材」
作家・吉村昭さんは「ふぉん・しーふぉるとの娘」(新潮文庫)の作者だが、その彼がいくつかの対談で、繰り返し、主人公イネを司馬遼太郎が「花神」の中で大村益次郎と「肉体関係を含む恋愛関係」にあったと言い続けていることに疑問を呈し、そうした事実はなく、「全く根拠のないつくり話」と一笑に付している。
吉村さんの話から渡辺京二さんが司馬氏の「翔ぶが如く」を評して「国民作家というものは大変で、嘘だろうがなんだろうが、どこまでも読者にサービスする」とからかっていたことを思い出す。
先ごろ上梓したばかりの「誰も書かない 中国進出企業の非情なる現実」が重版された。まずはありがたいことだ。
ここに紹介された多くの事実をマスコミは報道しなかった。それでいて、今になって中国経済の先行きを案じて見せる。いい加減な話である。だがマスコミは書かなかっただけだが、私のレポートをさも自分が取材したオリジナルな情報であるかのように自著のなかで紹介した漫画家がいる。「社長島耕作」の作者弘兼憲史である。
「島耕作」のなかには私が書いてきた田中角栄に対する中国側の評価やキッシンジャーの主催するキッシンジャーアソシエイツのロビイングの事実(これらは「田中角栄と毛沢東」「人脈で読む中国の真実」に詳細に書かれている)、さらに森ビルの上海世界金融センタービル建設をめぐるエピソード(宝島リアル、「諸君!」などで現地取材後、レポート)も独自のスクープとして使われている。もちろん引用などどこにもない。
奇妙なことである。弘兼はいったいどこで、こんな情報をを知ったのだろうか。島耕作は実は卑劣なパクリンボ。
なぜこんな男がサラリーマンに愛読されるのか。読者はパクリの事実を知らないからである。
どうせなら弘兼は島耕作の勤務する会社はパナソニックがモデルらしいから、同社の中国スキャンダルも独自取材のうえ、書いてみてほしい。それが表現者の誠実さというものだろう。
これから日本企業は「島耕作も言わない中国進出企業の非情なる現実」を味わうことになる。マスコミも書かないが、著名な漫画家も堂々と他人のネタをパクって恥じないこの現実こそが中国における日本企業のビジネス敗戦を生み出したのである。
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『講演会では中国の金融プラス実体経済の現状、さらに急速に警戒感が高まり始めた日本企業の対中ビジネス観の実態を取り上げます。また「誰も書かない・・」の中で取り上げたいくつかの著名企業についても触れたいと思います。選挙が終われば8月15日の終戦記念日、そして9月に入れば、尖閣国有化1周年です。こうした政治の季節に加えて、中国の経済危機が深刻化しているのが現実です。企業関係者、中でも中小企業のオーナーの方にぜひ聞いていただきたいと思っています。』
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