Updated: Tokyo  2013/07/30 15:38  |  New York  2013/07/30 02:38  |  London  2013/07/30 07:38
 

アベノミクス「50点」、GPIFは多様化進めよ-慶大小幡氏

Share Google チェック

  7月26日(ブルームバーグ):「リフレはヤバい」などの著書で知られる慶応大学大学院の小幡績准教授(45)は、安倍晋三政権が進める経済政策、いわゆるアベノミクスに「点数を付けるなら50点」と辛口採点だ。今後はこれまでの期待が剥落し、実際に打ち出される政策に国民の間から不満が出始める、とみている。

小幡氏が19日、ブルームバーグ・ニュースの取材に応じた。この中でアベノミクスについて、日本を覆う閉塞感を一掃し、「雰囲気を良くした点では100点だが、金融政策を中心に手段は最悪で0点。足して2で割ると50点になる」と述べた。政策の中身がゼロで、「中長期的にはごまかしが効かなくなり、徐々に悪い方の効果、副作用が出てくるのではないか」と懸念を示す。

日本銀行の黒田東彦総裁が4月に打ち出した量的・質的金融緩和について、小幡氏自ら言うように「非常に批判的」な立場。異次元緩和はインフレを起こそうとしており、「当然、名目金利は上昇傾向をたどる。金利上昇は設備投資、個人消費にマイナスなほか、国債価格の下落による中小金融機関の行き詰まりも懸念される」と指摘した。株価上昇による資産効果はプラスだが、「バブル的になれば、反動が大きなマイナスになる」と言う。

リスクの大きさを踏まえれば、「異次元緩和はフェードアウトさせなければならない」と強調。市場に逆ショックを与えないように、まずは「さらなる緩和的政策を求める一部の要求に対し、期待感を下げていくことから始める必要がある」としている。

参院選後はいばら道、財源や消費税

「安倍政権はこれまで勢いよくきたが、参院選後は難しくなる」と小幡氏。衆参両院の多数派が異なる「ねじれ」解消で、政治は安定するとみられるが、国民は「政局が安定しさえすれば良いとの考えから、政策の中身に苦情を言う段階に入ろう」とし、「政策、政権に対する支持率という意味ではより厳しくなってくる」と読む。

具体的には、円安進行を受けた原材料や製品輸入コストの増加が与える影響、先行した期待が実現しないことへの不満などが警戒され、年金や医療を含めた「社会保障の財源問題など、既得権益が絡む難題は何も解決しない」との見方を示した。

財政健全化に向けた政策として小幡氏は、来年4月からの消費税率引き上げの是非を政府が今秋に最終判断することに注目する。「5%から8%に上げるかどうか、その後に10%に上げるかどうかといった二者択一で決断を迫られており、ごまかしが効かない」と指摘。上げる、上げない「どちらもネガティブな要素がある」としながらも、マーケットに「大きな波乱をもたらすのは、上げなかった場合だろう」とみる。

こうしたマイナス面を和らげるため、小幡氏は消費税率の引き上げ方法として、10%になるまで毎年1%ずつ上げていくよう提案。事務対応コストはかかるものの、「反動減を抑えられ、景気判断をする必要もなくなる」とメリットを説明した。

GPIFに運用多様化の必要性

小幡氏は、国民年金と厚生年金の保険料を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)で、運用委員会委員も務めている。日本の年金運用について、「総じて改善の余地が非常に大きい」とし、GPIFは「もっと資産の多様化を進めるべき」との認識を示した。

不動産や不動産投資信託(J-REIT )などを投資対象に含める余地があるほか、「国内資産のウエートが過大であることは間違いなく、ホームバイアスの是正も極めて重要」と指摘。国内外の債券・株式の伝統的4資産による運用構成ではなく、「現代の多様化を反映したカテゴリーに変えるのも一つの考え方。変えなくても、ウエート付けにおいてもっと多様な資産を買う余地があるのではないか」としている。GPIFは、世界最大規模の年金運用機関。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 河野敏 skawano1@bloomberg.net;東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Nick Gentle ngentle2@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net

更新日時: 2013/07/30 13:15 JST

 
 
 
最新のマーケット情報を携帯でご覧いただけます。ぜひご利用ください。