インサイド:岐路に立つJFL/中 残留する意味 育成と地域貢献を重視
毎日新聞 2013年07月24日 東京朝刊
J3参戦への第1段階となるJリーグへの準加盟を申請せず、JFL残留の道を選んだのは6クラブ。このうち、ホンダ、ソニー仙台、ホンダロック、佐川印刷の4クラブは社員が仕事と両立しながらプレーする「企業チーム」。横河武蔵野とHOYO大分は現在はクラブの運営母体をNPO法人化している「元企業チーム」だ。
昨季限りで佐川急便が運営する佐川滋賀FCが活動停止し、企業スポーツ衰退の波はJFLにも無縁ではない。そんな中で持ち上がったJ3構想。サッカー界には企業の撤退を懸念する声が上がった。JFLの加藤桂三専務理事は「実質4部リーグとなって注目度の低下が見込まれることが、サッカーをやめる理由になるのではと心配し、感触を確かめに回った」と明かす。
だが、それは杞憂(きゆう)だった。ソニー仙台の鈴木登之和(としかず)理事は「注目度はそれほど重要視していない。社員に一体感を与え、地域に支持されることに存在意義がある」と強調する。ソニー仙台は、2011年の東日本大震災で工場が甚大な被害を受け、一時休部を余儀なくされ、選手たちも「もう廃部でも仕方ない」と覚悟したというが、シーズン途中から活動を再開した。鈴木理事は「選手は自然に避難所を回り、ボールを蹴って子どもに寄り添った。そうした積み重ねがあるから社員の理解もあり、廃部の声は今も出てこない」と言う。
■プロに勝てる力を
浜松市にある「アマチュアの雄」ホンダ。選手全員が社員で午前は仕事、午後から練習に励む。現行のJFLで優勝4回、07年の天皇杯ではJの3クラブを撃破してベスト8進出。1997年にJリーグを目指したが「二輪、四輪などに専念する」(五味裕司運営委員)という会社の方針で断念した。求められるのはソニー仙台と同様、従業員の士気高揚や地域貢献だが、GKの中村元は「Jリーグにあがらなくてもプロになるチームに勝てるのを見せたい」とプライドをのぞかせる。
■サッカーに変わりない
東京都武蔵野市に本拠を置く横河武蔵野。選手の約半数は同社社員だが、残りは学生やスポンサーに仕事の提供を受け働く選手だ。
「白でも黒でもないグレー」。依田博樹強化担当は将来のJリーグ参戦についてこう表現する。今年はJは狙わない。Jに昇格した多くのクラブが財政などで苦しむのが聞こえるから、今できることをやる。それは育成。「下部組織でサッカーを教えることで地域貢献する。そこからトップにあがる選手もいる。トップで力をつけてJのクラブへ移籍することもある。我々が生きていく道はそこしかない」