日曜日の夜、ソウル・蚕室のオリンピック・スタジアムで久しぶりにサッカーAマッチの試合が行われた。そこで東アジア杯韓日戦でサッカー韓国代表の公式サポーター集団「赤い悪魔」が独立運動家・申采浩(シン・チェホ)が残した言葉「歴史を忘れた民族に未来はない」を大きな横断幕に書いて広げた。そして李舜臣(イ・スンシン)将軍と安重根(アン・ジュングン)義士を描いた大きな肖像画が描かれた幕も横で振った。最初は大丈夫だった。だが、日本側の抗議を受けた大韓サッカー協会が前半戦終了後に横断幕を撤去した。すると赤い悪魔は後半戦の応援をボイコットした。
同スタジアムではサッカー日本代表のサポーター集団「ウルトラス・ニッポン」も軍国主義の象徴である大きな旭日(きょくじつ)旗を振っていた。日本代表が出場する国際試合にはよく旭日旗が登場する。アジアサッカー連盟(AFC)チャンピオンズリーグでもいつも目にする光景だ。日本のメディアは赤い悪魔の横断幕を問題視したが、旭日旗については指摘しなかった。きのう(29日)には官房長官までもが赤い悪魔の横断幕の言葉に対し「極めて遺憾だ」と述べた。おそらく官房長官はアジアの人々にとって旭日旗がどれほどおぞましい記憶を呼び起こすものなのか分からないのだろう。
2010年10月、ソウル・上岩のソウル・ワールドカップ・スタジアムで韓日サッカー評価試合が行われた。その後も北側のゴール裏スタンドやスタジアムを区切るフェンスに横50メートルを超える大型横断幕が掲げられた。「歴史を忘れた民族に未来はない」。今回のオリンピック・スタジアムの横断幕と大きさや字体と同じだった。白地に大人の身長を上回るほどの大きな文字だった。応援団は、李舜臣将軍と女性独立運動家の柳寛順(ユ・グァンスン)の肖像画が描かれた幕を振った。ゴール近くにはカメラマン数十人が集まっていた。誰も横断幕の文字には関心がなかった。その時は特に問題にはならなかった。
国家代表が対決するAマッチは愛国心も手伝ってムードが盛り上がる。しかし、サッカー場は危険な火薬庫も同然だ。自制できず極端にほとばしる感情が火薬に火を付ける。2010年は何事もなかったが、2013年には争いの火種になるかもしれない。韓日関係は今「がけ」すれすれの所を歩いている。両国間には独島(日本名:竹島)、歴史教科書歪曲(わいきょく)問題、日本の改憲と軍事大国化の兆し、相次ぐ慰安婦関連の妄言、日本の政治家による靖国神社参拝など問題が幾重にも重なっている。
中央アメリカのエルサルバドルとホンジュラスは1969年、ワールドカップ予選時のもめ事が引き金になり、五日間にわたる戦争までした。発端は、応援団が相手チーム選手の宿泊先近くで車のクラクションを鳴らしたり、太鼓をたたいたりして睡眠を妨害した騒動が広がったことだった。ソウル・オリンピック・スタジアムでは今回、横断幕問題で埋もれてしまったイベントがあった。日本の国歌演奏時、ソウル・広津多文化(国際結婚家庭)合唱団の子ども3人が日本語で「君が代」を歌ったのだ。父親か母親のどちらかが日本人の子どもたちだ。そのように「手を差しのべた」光景も関心を引くことはできなかった。