北越急行:絶好調に影 2年切った北陸新幹線延伸、ドル箱「はくたか」廃止必至 沿線自治体、薄い危機感 /新潟
毎日新聞 2013年07月29日 地方版
「第三セクター鉄道の優等生」と呼ばれてきた「北越急行」(南魚沼市)に明暗が交錯している。このほど発表された2012年度決算は開業以来16年連続の黒字決算。経常利益、輸送人員とも過去最高を記録したが、その一方で、ドル箱の特急「はくたか」廃止に直結する北陸新幹線の延伸も開業(15年春)まで2年を切った。廃止後の赤字転落が目前の危機として迫るのに、てこ入れ策はまだ見いだせないのが現状だ。【神田順二】
同社の12年度決算は、営業収益は46億9100万円(前年度比4億2500万円増)。経常利益は18億4000万円(同7億900万円増)。法人税などを差し引いた純利益も11億2900万円(同5億5300万円増)といずれも過去最高だった。
増収をもたらしたのは輸送人員の大幅な伸びだ。総輸送人員は前年度比11・9%増の392万6000人。同社のほくほく線とJR線を直通運転する「はくたか」(JR越後湯沢−金沢、福井、和倉温泉)の輸送人員は、東京スカイツリー開業による北陸から東京への観光客の増加などで、同13・5%増の280万2000人。普通列車も伸びて同7・9%増の112万4000人を記録した。
だが、総輸送人員の約7割、営業収益の約9割を占めるはくたかは、北陸新幹線の長野−金沢間が開業すれば廃止が確実視されている。その後は赤字経営に直面するのは必至だが、出資する沿線自治体に危機感は薄い。同社が経営安定化策として積み立てる内部留保金が約104億7000万円に達し、目標の100億円を突破したためもあってか「年間3億〜5億円の赤字が出ても20〜30年は大丈夫」という楽観の声もあるほどだ。
こうした見方に、同社の大熊孝夫社長は早くから「このままでは経営はいずれ行き詰まる」と懸念を示し、「北越急行が沿線自治体に納めた固定資産税の累計は、既に自治体の出資額を上回る。自治体は税収の一部を北越急行支援のために積み立てる仕組みをつくるべきだ」と主張してきたが、自治体側の反応は鈍い。大熊社長は固定資産税の軽減策として「将来的には、運営は民間が行い、鉄路や土地は自治体が所有する上下分離方式(公設民営)を視野に入れなければ存続できないだろう」とも語る。