安倍首相、消費増税影響を複数案で検証するよう指示=政府筋
[東京 29日 ロイター]- 来年4月に予定される消費税率引き上げをめぐり、安倍晋三首相が増税による経済への影響について、複数案に分けて検証するよう関係部局に指示した。
政府筋がロイターの取材で明らかにした。ただ、検証は消費増税実施の際の追加対策の見極めが目的で、増税の選択肢を示すものではないと説明している。
政府筋によると、1)消費税率を現行法通り2014年4月に8%、2015年10月に10%に2段階で引き上げる、2)最初に2%上げ、その後1%ずつ引き上げる、3)毎年1%ずつ引き上げる──などのケースで国内経済への影響を検証。予定通り実施した場合と小刻み上げ案の比較検討を試みる。
検討の場については、経済財政諮問会議のほか、有識者会議を新たに設け広く専門家から意見を聞く案が浮上している。8月12日の4─6月GDP(国内総生産)発表後に議論を始め、最終判断の参考とする予定だ。
消費増税をめぐっては、政府内の路線対立が鮮明になっている。麻生太郎財務相が引き上げは国際公約だとして、予定通り実施すべきと主張する一方、首相のブレーンを務める浜田宏一、本田悦朗の両内閣官房参与は経済への影響を考慮して小刻みな増税を求めている。
政府筋の1人は「予定通り3%上げた場合に、1%ずつ上げた場合と変わらないようにする対策を考えなければならない。そのために甘利明経済再生相は1%ずつと3%上げの場合の影響を検証する考え」と指摘。検証の狙いは、経済の影響が軽微とみられる小刻みな上げの場合と比較して、対策に万全を期すために参考にするもので、消費税の選択肢ではないと強調した。
安倍首相は、9月9日の4─6月GDP(国内総生産)2次速報発表後、10月に召集される臨時国会前までに、経済・市場動向への影響、財政健全化目標達成への影響など総合的に点検し、消費増税の最終判断を行う見通し。菅義偉官房長官は28日、「首相はまだ白紙」と述べた。
最終判断基準に関して菅官房長官は「デフレ脱却は、政権すべてをかけてやるべき大事業だ。そこに大きな影響を与える」と述べ、増税後も税収が伸びない事態は避けなければならないとの考えをあらためて強調した。同時に「財政健全化を常に頭に入れながら、判断する」と繰り返した。既に様々な方面から個別に意見を聞いていることも明かし、「毎年毎年は勘弁して欲しいという人もたくさんいることも私どもはわかっている」と語った。
「1%ずつ」の引き上げは経済的な影響は軽微でも、小売り業界など財界は事務コストの煩雑さから難色を示している。さらに、1%ずつの引き上げでは、2015年度の基礎的財政赤字半減目標の「達成は難しい」(政府筋)とみられる。
自民党は大勝した参院選の公約で、財政再建について、政府の基礎的財政収支の赤字削減目標を踏襲し、20年度までに対GDP比で黒字化し、その後も安定的な引き下げを目指す方針を明記している。政府・自民党の財政健全化の取り組み姿勢に疑問が生じれば、金利が急上昇しかねないと政府関係者は警戒する。消費増税を見直す場合の法改正に伴う施行日の遅れや政治的な党内抗争表面化のリスクなど、経済への影響だけでなく、多方面からの総合判断が求められている。
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