〔BOJウオッチャー〕黒田総裁、消費増税で財務省サポート 緩和効果の確保で
[東京 29日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁が29日都内での講演で、来年4月の消費増税を計画通り実施しても、景気への影響は軽微との認識を示した。増税をめぐり安倍晋三首相周辺と財務省など政府内での見解の相違が表面化しつつあるが、この日の発言は古巣の財務省の主張を結果的に支援したかたちだ。
黒田総裁は29日に開かれた「内外情勢調査会」で講演。金融緩和の効果を高めるためにも政府による財政の信認確保が重要と強調。日銀の国債買入れが財政ファイナンス(穴埋め)と受け取られれば「長期金利が上昇し、異次元緩和の効果も失われる可能性がある」との懸念を示した。
講演後の質疑応答では、政府が予定通り2014年4月に3%、15年10月に2%の計5%の消費増税を行っても「日本経済の潜在成長率を上回る成長を遂げる見通しだ」「成長が大きく損なわれることはない」と答えた。
黒田日銀が4月に巨額の国債買入れを伴う異次元緩和を打ち出した際、政府が消費増税など財政再建を進めるのを前提としていた。
また、通貨の信認を守る立場の日銀総裁が財政再建の重要性を強調するのは自然。ただ、このように細かく政府の消費増税計画に関連して言及するのは珍しい。黒田氏は財務省主税局出身で、来春の3%増税をめぐり守勢に立っているかに見える財務省の主張に理解を示す見解を表明した、とみる関係者もいる。
安倍首相の経済ブレーンである浜田宏一、本田悦朗両内閣官房参与は、7月に入り増税が景気に水を差す可能性がある場合は、毎年1%ずつの増税を実施するべきと提案。安倍首相も複数の増税案について、経済への影響を検証するよう指示するなど、規定路線である来春3%増税がやや流動的となる兆しが出ている。
一方、財務省側は、来年4月の増税は15年度に国・地方の基礎的財政収支の名目国内総生産(GDP)比の赤字幅を10年度から半減させる中期財政計画の前提で、国際公約にもなっているとの立場だ。安倍首相が増税の最終判断を行うとされる秋の臨時国会開催まで増税議論は大きな曲折を描く可能性が高まっている。 (ロイターニュース 竹本 能文 編集;田巻 一彦
© Thomson Reuters 2013 All rights reserved.
再稼働「福島の総括が先決」
新潟県知事はインタビューで、原発再稼働をめぐる国内の動きについて、福島事故の検証・総括が先行すべきとの考えを強調。
記事の全文 | 特集ページ