【贋作】廃神様を●めてはいけない【三次創作】 (器物転生)
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課金姫、転生する

 神様という存在は、とても眩しい物なのだと、初めて知ったわ。
 今、私の前には神様がいるの。太陽のように辺りを照らす、その光の中に神様は居るはずよ。でも、その姿を私は直視できない。そんな事をすれば、私の目は焼き切れてしまうでしょうね。その理由を知りたいのならば、宇宙で輝く太陽を思い浮かべるといいわ。宇宙空間を挟んで数億km離れた上に、地球の地表から100kmまでに存在する大気の層。それらによって光を軽減されなければ、人の目は太陽を映すことにすら耐え切れないのだから。
 おまけに宇宙の太陽と違って、神様という太陽は私の目の前にいるの。そんな物を直視すれば失明は避けられない。目だけで済めば良いものの、きっと脳も焼き切られるでしょうね。これは単なる光ではなく、もっと次元の異なる物だわ。光によって近距離から照らされた私の体が焼けていないのは、単なる光ではない事が理由だと思うの。神様を見た者は盲目である。それは光り輝く神様の姿を眼球の中に捉えた瞬間、人の身では耐え切れず、失明してしまうからに違いないわ。
 神様を直視せずに済む方法は簡単よ。頭を垂れれば良い。そうすれば、神様を見ずに済むでしょう? 私は初めて、日本の礼儀作法に感謝したわ。西洋の宗教のように両手を組み、膝を突いて神様に祈る体勢では、体のバランスを崩した瞬間に、うっかり目を開けてしまう心配があるじゃない。日本の礼儀作法ならば、確実に両脚を下ろせるわ。さらに、両手も床に付けるから、万全の体制で神様を迎える事ができるの。いわゆる土下座ね。
 私は頭を垂れたまま、神様から声が掛かるのを待ったわ。何の用も無いのに、私が此処に存在するとは思えないもの。できれば早く帰りたいと思うけれど、それは無理でしょうね。ここで目覚める前の記憶によると、すでに私の肉体は壊れているから。もはや私は、私の肉体に帰ることは出来ない。すると、ここは、あの世かしら? もしかすると目の前にいる神様は、閻魔大王と呼ばれる裁きの神なのかも知れないわね。
『          』
 言い知れない神様の思念が、私に伝わる。言葉ではなく、心で感じた。それを簡単に言えば、『とある者の野望を阻止せよ』よ。複雑に言えば、『これから御前は生まれ変わって、FF11という仮想空間で展開されるオンラインゲームでレベル上げを行い、後にゲームの世界へ転移し、レベル上げを行ったキャラクターとして構成されるので、同じ時期に転移する人物の野望を阻止せよ』という事よ。
 それだけではなく、「とある人物」に関する情報も私は受け取った。巨大な塔の上層にある広大な広間で、多数の強力な魔物を従え、宝石で飾られた豪華な玉座に座る不死者よ。その不死者は高い知性を身に潜め、とある王国の国王に手を貸した。そして人間同士の戦争で対軍規模の魔法を放ち、その屍から零れ落ちた魂を収集したの。その名はアイズ。その有り様は、魔王以外の何者でもなかったわ。
 とても勝てる気がしないじゃない。なんてムリゲーなのかしら。人を殺すどころか、自殺すら出来なかった私に、いったい何を期待しているのかしら。でも、ここで「嫌です」とは言えないわ。断った瞬間、目の前にいる神様によって、私の魂は焼き焦がされるでしょうね。この場には、「はい」と「YES」以外の選択肢は存在しないの。今死ぬか、後で死ぬか。もちろん私は、死を先送りにしたかった。
 とは言うものの、素のままで魔王アイズと戦うのは無理だと思うの。なにか魔王アイズに対して有効な能力を、神様から授かりたいものね。何よりも即死耐性は重要よ。あれほど広範囲に当たり判定の発生する魔法を回避するなんて、ムリゲー過ぎるわ。点ではなく面なの。光線といえば分かり易いかしら。ピカッと光った瞬間、その射線上にいた数万人が、一瞬で命を絶たれるの。呪文詠唱も無く、瞬時に発動したわ。神様から与えられた情報によると、瞬時発動に回数制限はあるものの、十数回は連発できるらしいわよ。そんなガトリング砲よりも凶悪な存在と、いったい如何やって戦えって言うの?
「あのー、その者と戦うために必要な力を、授けては頂けないのでしょうか……?」
 顔を上げないまま私は控え目に、偉大なる神様に対して御願いする。すると、肌を焼くような熱が体を覆ったわ。私の頭を押さえつけているかのような神様の存在感が増し、私の体に熱を伝える。ああ、体が温かいわ。もしかして、これが神の力という物なのかしら。不思議な力が湧き上がってくるような気がする。私の中に宿った熱は、魔を滅ぼす太陽の化身ね。この力があれば、魔王アイズなど恐れるに足りないわ!
 ……うーん、あれぇ? ちょっと熱過ぎないかなー。このままだと発火しそう。まるで体が燃えているかのような……気になるから、チラッと自分の体を見てみましょう。はーい、チラッ☆ ぎゃー、発火したー!? 燃えるー!? 体が燃えちゃうー!? もしかして神様怒ってる!? 怒っていらっしゃるー!? ああ、私の体が私の体がっ、燃える炎で魂削れて輪廻転生の輪に戻されちゃうー!?
「ごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさいぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃごめんなさぃ」
 必死で謝ると神様は、私の魂が燃え尽きる前に力を抑えてくださりました。でも、指の先が溶けて無くなっているの……これって治るのかしら。危ない危ない。不用意な発言が原因で消滅する所だったわ。やっぱり「はい」と「YES」以外の選択肢は無いようね。「いいえ」や「その他」の選択肢は一応存在するけれど、選ぶとデッドエンドルートへ突入するの。とにかく「はい」ね。それ以外の言葉を口から出してはいけないわ。なぁに、生まれ変わってしまえば、こちらの物よ。フフフフフ!
「ぎゃー! 体が燃えるぅー! ごめんなさぃごめんなさぃ! 神様だから心が読めちゃうんですねー! さすが神様! 凄いですぅ、素晴らしいですぅ! え? さっきの声? 嘘です嘘です、ちょっとした浮気だったんです! 一回くらい許してくださいよ! え? さっきの事と合わせて、これで二回目? ごめんなさいー!」
 必死で謝ると神様は、私の魂が燃え尽きる前に力を抑えてくださりました。でも、私の体が熱で溶けて、全体的に細く、そして小さくなっているの……これって治るのかしら。もしも私の魂が燃え尽きたら、手足も胴体も溶けて、熱で溶けて小さくなった魂の欠片が残るのでしょうね。人としての形を失って、自身が何者であったのかも忘れてしまう。ああ、だから人魂と呼ばれる物は、丸い上に燃えているのかしら。
『      』
「はい!」
『        』
「YES!」
『          』
「おっけー!」
 肯定の返事ならば、ちょっと軽い言葉を返しても許してくれるようね。ギリギリまで踏み込む! ギリギリまで踏み込む! ストレート、アッパー! そして私に有利な条件を引っ張り出すのよ! ああ、しまった! 失敗した! 燃えるぅ燃えるぅ! 神様は厳しかったわ。溶けて薄っぺらくなった私の体積的に、これ以上神様と交渉するのは不可能ね。私は結局、何も貰えないまま生まれ変わる事になったわ。
 唯一の救いは、オンラインゲームで育てたキャラクターが、異世界転移後に自身の肉体となる事かしら。キャラクターを成長させる事は、私自身を強く育てることに繋がるの。神様から下された命令である『魔王アイズの野望を阻止せよ』を達成するためには、キャラクターを限界まで鍛え上げる必要があるわ。恐るべき魔王に勝利できるか否かは、キャラクターを鍛え上げるために、「いくら課金できるか」に掛かっているのよ。

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