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「海外事情」平成15年6月号より  安明進

北朝鮮の工作活動概観安明進 はじめに世界の大部分の国では形態や大小、能力と成果の有無の差はあれ、何らかの情報機関を持っている。二〇世紀の情報機関は冷戦時代最先端に立って体制存在とあるいは脅威から抜け出すため、また相手の体制を転覆するために利用された。代表的なもは米国CIAとソ連KGBを筆頭とした共産、非共産国家の熾烈な情報戦であった。この情報戦は冷戦時代世界中で国際情報活動と工作活動を率いてきたと言えよう。 北朝鮮はどうだろうか。北朝鮮は体制樹立初期から旧ソ連指導部とKGBの緻密な計算のもとに生まれたものとみることができる。北朝鮮政権樹立は旧ソ連政府と赤軍の全面的な支援のもと、日本統治下にあった朝鮮に対する情報活動とゲリラ活動に基礎を置いている。そして北朝鮮の工作機関は朝鮮戦争から半世紀が過ぎてもなお続く分断によってさらに多くの変化と発展、長い経験を蓄積してきたとみることができよう。 政権初期北朝鮮共産党によって組織運営された松島政治学院は朝鮮戦争当時は朝鮮人民軍最高司令部と政治局に指揮権が移り、戦争後には朝鮮労働党と人民軍、社会安全部によって三重の工作機関が樹立、維持されてきた。 しかし、人民軍の工作機関は去る一九六八年一月の青瓦台(韓国大統領官邸)襲撃事件とそれに対する金日成の謝罪などで急激に弱体化し、一九七〇年代以後存在自体に対する否定的見解が台頭し、一九七〇年代当時人民武力部長であった金昌奉と彼の傘下にあった「農産部隊」という名称の情報工作特殊部隊が体制転覆企図をしたという理由で人民武力部偵察局に小規模縮小運営されてきた。「鴨緑江大学」という軍事大学で人民武力部工作員に準ずる偵察局要員を養成してはきたものの体系的で大規模な情報、工作員を要請したのではなく、戦時に備えて軍の偵察兵力を維持する程度の規模だったと言えよう。 一九九〇年代中盤以後金正日の国防委員長就任と軍隊による体制運営などで最近人民武力部傘下工作機関が再び大きくなり活動規模も拡大改変されているが、北朝鮮体制の核心情報機関は労働党三号庁舎であると言える。また、社会安全部(警察)と現在の国家安全保衛部(政治警察)傘下にも工作機関があるが、これらは工作活動を敵国に対する瓦解工作やテロではなく、北朝鮮体制の脅威になる勢力に対する諜報と情報収集に基本を置いていると見ることができる。最近は国家安全部傘下工作員と人民武力部、保衛司令部所属の工作員が中国一帯に大規模に派遣され韓国情報機関ないし米国情報機関、脱北者支援の先頭に立つNGOに対する探索と逮捕に携わっている。 北朝鮮は体制自体が本質的に反人民的、反人権的性格を帯びているため巨大な情報、諜報工作機関を運営しなければ体制維持が危機にさらされると判断している。相対的概念ではあるが今日世界中でもっとも大きく、多数の情報、諜報工作機関を運営しているのがまさに北朝鮮であると言えよう。 最も重要な工作機関「三号庁舎」 現在北朝鮮体制情報工作活動のもっとも大きな比重は労働党三号庁舎が占めている。多くの人々が「労働党三号庁舎」と言えば労働党に一号庁舎、二号庁舎があってその次の三番目の庁舎をさして呼ぶものだと錯覚しているが、そうではない。三号庁舎は北朝鮮内部での捜査権はないが北朝鮮の代表的情報工作機関である。しかし三号庁舎は北朝鮮体制維持に必要な情報、諜報活動のためだけに存在するのではなく、犯罪を生産するために存在するとさえ言うことができる。 北朝鮮三号庁舎に対して具体的に知ろうとすれば一九四五年までさかのぼらねばならない。金日成は政権を掌握した初期から韓国を赤化統一するために手段方法を選ばなかった。そしてその一環として対南分野を担当する中央党連絡部が設置される。この組織はその後中央党三号庁舎という巨大組織に膨れ上がり、今日北朝鮮における対内・対外政の策決定に重要な役割も遂行する核心権力機構として重要な役割を遂行している。 三号庁舎は北朝鮮体制維持の必須的な要素ではなく、韓国を赤化統一するためにあらゆる犯罪を生産している。三号庁舎はあえて北朝鮮当局の言葉を借りれば「祖国統一を最高目標とする部署」ということになるが、それとは別に今日世界各地であらゆる犯罪行為を行っている。三号庁舎にとっては平和的統一などありえず、統一は韓国の体制転覆を通してのみ成し遂げられると判断しているため、破壊とテロを基本にしているのである。この組織は韓国の赤化統一のために韓国内の反政府勢力を構築するため工作員を必要とし、彼らを専門的に養成していくための教育機関、現職工作員が居住し再教育を受ける招待所も必要になる。工作員養成機関は当初、「松島政治学院」「金剛学院」と呼ばれ、その後は政治学校に、金星政治軍事大学、朝鮮労働党中央委員会直属政治学校、金正日政治軍事大学などと何度も名前を変えながら存在してきた。 北朝鮮政権樹立初期、松島政治学院時代には必要に応じて何カ月かずつ韓国出身者に対する短期工作教育を行った後に韓国に派遣して政治、経済、社会、文化、軍事などの分野に関する情報、諜報活動はもちろん、テロ活動も行ってきた。以後一九五〇年の朝鮮戦争勃発以後、一九六〇年代に入ってからは北朝鮮の工作員養成形態が専門的教育形態に変わりはじめ、平壌市龍城地区一帯に「政治学校」という巨大な工作員養成基地が構築される。 このときから専門対南工作員養成機関である朝鮮労働党一三〇連絡所(金正日政治軍事大学)が生まれるのである。その後一九七〇年代に入って工作員養成機関は「金星政治軍事大学」に改編され三年制工作員養成課程を設け、一九八〇年代初盤に四年生工作員養成機関である「朝鮮労働党直属政治学校」に改編された。 一九八〇年代後半から韓国をはじめとする自由民主主義社会の急激な変化発展とそれにより専門的に対応するため、一九九二年一月から工作員養成を五年六カ月制専門課程としてより拡大するようになり、教育機関の名称も金正日の名前をつけた「金正日政治軍事大学」に改編した。この大学では工作機関三号庁舎の四つの部署、すなわち現在の対外連絡部(旧社会文化部)、三五号室(旧対外情報調査部)、作戦部、統一戦線部に必要な人員を教育養成し送り出す。韓国内工作を担当する対外連絡部 対外連絡部はかつての連絡部、社会文化部であり、韓国内部に地下党建設を行うことを目的にしており、専門情報、諜報活動をして韓国内反政府勢力を糾合、反北勢力に対するテロと拉致などを主要目的とする部署である。韓国出身で党中央委政治局員候補にまで昇格して引退した大物女工作員である鄭敬姫が去る一九八七年までこの部署の部長をつとめ、第一四代大統領選挙の二月前に明らかになった南朝鮮労働党事件の主役李善実(二〇〇〇年死亡)前党中央委員候補もこの部署の所属だったという事実から対外連絡部の実態を伺い知ることができる。 

 去る一九九五年忠清南道扶余で逮捕された武装工作員金東植と一五代大統領選挙直前に逮捕された夫婦工作員崔ジョンナム・姜ヒジョンも皆対外連絡部所属である。部署の重要性にともない、対外連絡部長はチョン・ギョンヒのような功労のある工作員でなければ李昌成・姜周一ら金正日党総書記の際側近が占めた。最近更迭されたことが明らかになった姜周一(別名姜ガンジュ)は一九九七年までは林ドンオクとともに統一戦線部第一副部長として活動したがその後対外連絡部長に昇進した。 統一戦線部で朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)を担当した姜周一は対外連絡部長に移るときに総聯業務も持っていったものと伝えられた。対外連絡部は現在「烽火政治大学」(一九九二年新設)という工作員養成機関を別途に設け工作員を養成しており、教育生並びに卒業生のためのいくつかの招待所も持っている。形態は朝鮮労働党一一〇連絡所(烽火政治大学)と呼んでいるが、これは金正日政治軍事大学分校の後身である。 連絡部から社会文化部に、また連絡部と変わったこの組織は現在数百人の工作員を養成、保有しており、平壌市龍城区域新美里一帯と龍城区域東北里一帯、順安区域一帯、それ以外にも北朝鮮の各地域に数百の招待所を運営している。一九六〇年代韓国で「統一革命党」という巨大な地下党を構築、運営し捜査網に引っ掛かって死刑にされた統一革命党党首金ジョンテらが代表的な連絡部の工作員であり、その以後にも南朝鮮労働党事件などで世界に広く知られるようになった。現在韓国の主要情報、捜査機関には前対外連絡部工作員が逮捕され転向し反対に対北捜査に専念している。海外工作を担当する三五号室 北朝鮮の海外工作部署としては三五号室(前対外情報調査部)がある。海外での主要諜報・情報収集を目的とする部署であるとはいうが、これは徹底した対南赤化統一のための集団であり、対南活動に深く関係している。一九八七年一一月大韓航空機爆破事件の主役がまさに対外情報調査部だった。当時手段方法を選ばずにソウルで開かれる八八オリンピックを阻止せよとの金正日の指示によって対外情報調査部は工作組(グループ)を派遣して大韓航空機を爆破したのである。 もちろん、世界の各国に対する工作ならびに拉致、テロなども行っている。代表的な例として西ヨーロッパでの日本人拉致事件を挙げることができよう。また作戦部と連携して日本に対する浸透とともに日本海岸での日本人拉致にも先頭に立ち国際的非難を受けている。彼らは日本のみならず世界の多くの国々で外国人を拉致してきており、その身分を利用して韓国と世界各国に浸透、工作員活動をしている。 三五号室は対南赤化統一の目的のためには北朝鮮との同盟国に対してすら無慈悲なテロ行為を行うことができる。代表的な例として去る一九九二年当時企画途中で金日成の指示により中断されたが韓国の与党総裁だった金泳三(後に大統領)と朴哲彦外相が旧ソ連を訪問しゴルバチョフらソ連最高首脳部に会って「北朝鮮政策」を推進しようとしたのに対しテロを仕掛けるために当時対外情報調査部工作員を現地に派遣したこともあった。 韓国で一九九〇年代後半大学教授として活動して逮捕されたムハマド・カンス(本名チョン・スイル)事件も三五号室が対南工作と外国人拉致にも深く関連していることを見せてくれている。三五号室は現在平壌市龍城区域新美里一帯、東北里一帯など何ケ所もの工作員招待所を持っており、海外でも多くの招待所を運営している。三五号室は海外で工作活動をするのみならず、各種犯罪活動にも関与している。海外での麻薬密売、偽札密売、武器購入などがまさに代表的である。 最近では日本のヤクザ、ロシア・マフィアなど国際犯罪組織と連携する一方、中国北京の新興暴力組織に資金を支援、育成して麻薬密売の下部組織としていることが知られている。また、外交特権を利用して外交官が麻薬を直接運搬したり外交行嚢で各国の北朝鮮公館に送り現地に供給する方法まで動員している。一九九〇年代中盤カンボジアで偽札、麻薬密売などで逮捕された元日本赤軍の田中義三のような人物が三五号室の指令を受けて活動した。三五号室は現在各国駐在北朝鮮大使館も主要拠点として活動している。三号庁舎で最大規模の工作機関、作戦部 作戦部は韓国に派遣する地下党工作員を案内並びに護送し復帰させる役割や、工作員に対する基本教育訓練、さらに要人拉致、暗殺、主要施設爆破のような対南テロ工作や対南浸透ルート開拓などの任務を遂行する部署である。作戦部では南派工作員と戦闘員(工作員案内員並びに工作船要員)などに対する正規基本教育訓練を専門に担当している金正日政治軍事大学、南派工作員派遣基地である二つの陸上連絡所(開城、沙里院)ならびに四つの海上連絡所(清津、元山、南浦、海州)を保有している。一九九八年六月二二日東海岸に浸透して摘発されたユーゴ級潜水艇と同年一二月二八日南海岸の麗水付近に浸透して摘発され浴知島付近で海上撃沈された半潜水艇も作戦部の所属であった。 一九九九年一月現在作戦部長は呉克烈(前北朝鮮軍総参謀長)である。現在北朝鮮でもっとも良く訓練された要員を三〇〇〇名近く保有している部署として平時はもちろん戦争勃発時韓国を内部的に瓦解させることを目的とした部署である。連絡部と三五号室、統一戦線部に対し必要に従い多くの人員を派遣、支援する部署として作戦部は三号庁舎で主な要役割を担当していると見ることができる。 前述のように作戦部は元山、清津、南浦、海州、沙里院、開城の六ケ所の連絡所を運営しており、これらの連絡所には二〇〇〜三〇〇名ずつの対南、対日浸透工作員がいつでも該当地域に浸透できる準備を整えている。また、作戦部は工作に必要な通信、船舶、装備を保証するための四一四連絡所、七二七連絡所、九一五連絡所、三一四連絡所を運営しているのはもちろん、今も海外の数多くの国々で各種の犯罪行為を行っている。中央党作戦部は三号庁舎で最も規模が大きな部署であり金正日が最も大事にし、自慢している特殊訓練要員を保有している部署でもある。統一戦線工作を担う統戦部 また、国内外の親北人士結集ならびに反北人士孤立を担当し、海外に統一戦線勢力を構築するのを専門にする統一戦線部(統戦部)がある。統戦部は南北会談を収監する部署でもあり、対南心理戦放送、各心理戦工作もし、朝鮮総連を直接指揮する役割も担当している。また外的問題にも直接・間接的に関与して金正日から「忠誠の資金」という名目の「秘密資金」作りにも先頭に立つ部署である。現在統一戦線部部長は中央党三号庁舎総責任者であり対南担当書記である金容淳が兼任している。 今日、日本に対する北朝鮮の介入は統一戦線部が総聯を指揮運営してさらに露骨化している。北朝鮮は総聯組織を日本国内にある一つの巨大な公開的工作拠点と認識して総聯を通し公開的な対日工作を遂行しており、また日本国内の親北勢力構築と彼らに対する支援で日本の親北化を企図している。 統一戦線部は日本政府・与野党の幹部にも接近を企図し、彼らが融和的な対北政策を展開するよう色々な工作活動も行っている。代表的な例として一九九〇年代初め、与党の核心人物である金丸信に北朝鮮を訪問するよう工作市有利な位置での日本との関係改善を企図したのがまさに統一戦線部である。統一のための三大革命力量 北朝鮮は朝鮮半島の統一のため三大革命力量の強化を唱えている。最終的には朝鮮半島を共産化、主体思想化、金日成主義化するということだ。三大革命力量の核心はもちろん北朝鮮の主体的革命力量だということであり、二つ目の力量が韓国の革命力量(地下党を主軸とする親北、反韓国政府勢力)、そして三つ目が海外革命力量であるとするものである。言い換えれば北朝鮮は全世界を金日成主義化しようという妄想に取りつかれているということでもあり、その一環として日本に対する工作も行っているということだ。 北朝鮮三号庁舎は北朝鮮が主張する「三大革命力量強化」の中で韓国の革命力量強化と海外革命力量の強化を担当する最も重要な部署だと言うことができる。三号庁舎の工作活動は大きく分けて対南工作活動と海外工作活動の二つである。 最近対南工作活動は自由で開放的な韓国の現状にあわせて非合法的活動から半合法的活動に、半合法的活動からほとんど合法的な活動へと変化している。一九八〇年代まで対南工作員の浸透は陸上と海上から隠密に行われ、活動も注意深く行われてきたが最近ではより大胆かつ露骨になっている。工作員浸透も外国人を装って貿易商として、あるいは就業勤労者として韓国に入国しており、潜入後非合法的ではなく露骨に親北左翼勢力に接近し自らが北朝鮮から来たことを明らかにしている。代表的な例として一九九六年東海岸の浦項で逮捕された崔ジョンナム・姜ヒジョン夫婦工作員の事件がある。二人の工作員は韓国労働運動家に接近し自らが北朝鮮から来て彼らと統一問題を論議しようと自らに協力することを要求するなど公開的工作活動をしていた。この事件が発覚することによって彼らの対南工作活動が露骨化していることが明らかになった。 彼らはまた一〇年前程前までは固定工作員のために無人函(トボーク)を埋設するような場合も都心から遠く離れた人の少ない地域に埋設していたが最近では都心に近いところにトボークや工作員装備を埋設している。 言い方を変えれば北朝鮮工作員の活動拠点が都心に拡大し、より韓国国民に近づいており彼らの接近範囲も以前のような固定工作員ないし協力者から労働運動家、学生運動家、政治活動家に幅広く拡大されているということだ。彼らの主要浸透目的もまた韓国での地下党構築と工作活動のみではなく韓国での民心撹乱、社会混乱惹起などに拡大しており、活動もそれらを遂行するための韓国の主要施設偵察、破壊可能性調査などに変化している。このため北朝鮮はより韓国化された工作員をを養成するため以南化環境教育館を金正日政治軍事大学と烽火政治大学内に巨大な規模で運営している。ここで工作員は徹底して韓国人として韓国の文化と言語、生活風習などを熟知し韓国の地形地理、大衆交通施設の自由な利用方法などを具体的に教育されている。 北朝鮮は韓国での政治変化と時代変化に対応するため現在の韓国の新聞放送報道をそのまま伝えて北朝鮮という閉鎖された社会から韓国に対してより自由に接近できる特権を享受できるように工作員に最大限の可能性を附与している。また対南工作は韓国で反米感情を増長することによって米軍撤収、韓国での親北勢力拡大、反米、反日感情誘導、北朝鮮現体制維持により有利になるよう韓国の政治、経済、社会、文化、軍事情勢を誘導するのに焦点を合わせている。成功する対南工作と困難になる対外工作 驚くべきかつ憂慮されていることは北朝鮮のこのような意図が韓国で現在そのまま受け容れられているという事実だ。韓国の現実が今日まで至り、北朝鮮の多様な対南工作ならびに心理戦が主要な役割をしたということを誰も否定できなくなっている。 しかし、北朝鮮の海外工作は対南工作ほどは成功していない。北朝鮮は内部的経済悪化によって海外工作をより大胆に、幅広く拡大してくことができなくなっており国際社会の雰囲気もまた決して北朝鮮に好意的ではない。もちろんこれには共産圏崩壊と北朝鮮体制の不安定化も一役買っている。 北朝鮮の海外工作は主として北朝鮮対南工作を容易にするのに必要な資金確保にあわせて犯罪団体との連帯とそれを通した麻薬、武器、偽札密輸に限定されている。北朝鮮はこのような国際的環境の下、既に海外に構築している親北勢力ならびに海外同胞組織をより良く利用することに最大限の焦点を合わせている。 その側面から見るとき今日日本にある朝鮮総聯組織は対南工作の基本になっていると言えよう。総聯は北朝鮮三号庁舎の徹底した意志と指示にしたがって動かされてきた組織であり、今後も決して三号庁舎と別個になり得ない存在である。もちろん、最近になって総聯を通じた無分別な資金確保と各種諜報活動によって日本国内で総聯の地位が急激に弱まり組織の生存自体が危機に瀕してはいるが、総聯に対する干渉を決して放棄することはないだろう。日本は総聯組織に対する監視をより徹底して行う必要がある。 三号庁舎の総聯に対する指示は公式、非公式に続けられてきたが、最近北朝鮮政権に対して悪化した日本国民世論、北朝鮮工作船に対する日本の強硬対応などで三号庁舎の日本浸透はより注意深く秘密裏に行われているものと展望される。したがって以前は工作船(八〇トン級の工作母船と、その中に搭載される五〜六トン程度の工作子船)を通した日本浸透、それを通じて総聯からの資金北朝鮮移送、対共産圏統制用品に対する北朝鮮搬入などのため工作船が潜水艦、潜水艇化されるのは火を見るより明らかだ。 北朝鮮は既に韓国に対して潜水艇、潜水艦浸透の多様な経験があるため今になって日本に対する潜水艇、潜水艦浸透とそれを通した工作は決して難しい問題だけではない。したがって今後は日本漁船やダイバーの北朝鮮潜水艇発見、申告が増加するものと思われる。日本政府と日本海上自衛隊はこれに備えなければならないだろう。おわりに 北朝鮮は体制が生存する限り決して対南、海外工作を放棄することはできない。言い換えれば北朝鮮工作を遮断する道は北朝鮮体制生存期間をより短くする道として金正日独裁下で苦痛を受けている二千万北朝鮮住民の苦痛を減らす道であり、東アジアの平和を保障する道となるだろう。また、北朝鮮は東アジアの平和のガンとも言える存在であり、その中でも特に三号庁舎がガンの中核機関として必ず消えていかなければならない存在だということはこれ以上強調する必要もないだろう。(あんみょんじん・元朝鮮労働党作戦部戦闘員)

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