原爆:7年後のヒロシマ 岩波書店、未公開写真集を刊行
毎日新聞 2013年07月28日 09時46分
原爆投下の7年後に爆心地から約2キロ圏内の広島の街を撮影した未発表の写真を、岩波書店が「立ち上がるヒロシマ1952」にまとめ刊行した。復興する広島の生き生きとした表情が収められている。
写真は岩波書店が1952年8月6日に出版した岩波写真文庫「広島−−戦争と都市」に掲載される予定だったもの。52年春から夏にかけて市内の情景を中心に撮影されたが、同年4月にサンフランシスコ講和条約が発効し、原爆報道の制限が解かれたため、同社は本の内容を原爆被害特集に変更。当初予定していた写真はほとんど使われずに終わった。
撮影したのは同文庫の編集長格だった写真家の名取洋之助さん(1910〜62年)や、スタッフの長野重一さん(88)=東京都品川区。撮影を担当した岩波映画製作所(98年に倒産)にこの時のネガ106本が残っており、3000枚以上の写真が写っていた。このうち約130枚を写真集に掲載した。
建設中の原爆資料館や、広島駅前に広がるマーケットのにぎわい、川岸にバラックが建ち並ぶ「原爆スラム」など、さまざまな角度から撮影。被爆によるやけどのひどさから「原爆一号」と呼ばれた故・吉川清さんが、原爆ドームのそばに開いた「原爆一号の店」で子どもたちに話をしている写真もある。
広島県立文書館の元副館長の安藤福平さん(64)は「そうそうたる写真家が外部の目で撮影した貴重な資料。戦後の広島はいろいろな問題を抱えていて、復興は並大抵の苦労ではなかったことも伝わってくる。残された資料としての意義は大きい」と話している。【村瀬優子】