とある人材コンサルの方から伺った話。
「追い出し部屋」と、会社にしがみつく社員
各種報道にあるように、大手メーカーを中心に「追い出し部屋」と呼ばれる退職勧奨の仕組みが実在しています。
会社に必要とされず行き場を失った社員を集めた掃きだめ部署……、なんてのは漫画の中の物語だと思っていたけど、どうやら本当にそんなことがあるらしい。漫画だったら、おおかた掃きだめ部署の掃きだめ社員が一念発起して会社の危機を救う、なんてストーリーになるのだろうが、現実の世界でそんなことは起こらない。追い出し部署への配属は、遠回しな解雇通知なのだ。
で、コンサルタントの方はぶっちゃけた本音として「追い出し部屋に入れられて、辛い思いをして会社にしがみつくくらいなら、会社を辞めればいいのにね…」と漏らしていました。特に「ほかの業界で使える知識もスキルも人脈もないオジサンたち」は苦しい境遇にあるとか…。
これ、非常に難しい話ですよね。確かに強者としての視点から言えば、会社の外で活躍できる人材にならなかった、その人の怠惰を指摘できます。今時、終身雇用が幻想であることなんかわかりきっている話なので、確かに怠惰といえば怠惰です。事実、ぼくらの世代は会社を信頼せず、外の世界で力を磨く人も多いわけですから。
しかし、だからといって、会社が社員に対して、非人間的な扱いをしていいわけではありません。一度雇った社員である以上、経営者が責任を引き取るべきだとぼくは考えます。使うだけ使って、不要になったから切り捨てる、というのは奴隷労働と変わりません。
会社をいつでも辞められるように、力を付けてもらう
では、この種の問題については、どのような解決策がありえるのでしょうか。
短期的なものではありませんが、ひとつ指摘できるのは「会社をいつでも辞められるように、力を付けてもらう」ことでしょう。
社員が会社にしがみつかないといけないのは、彼らが「その会社でしか通用しない人材」だからです。だったら、「外の世界でも通用する人材」になってもらえばいいわけです。社員がみな会社の外で活躍できる人材なら、追い出し部屋なんて必要ありません。
「外の世界で通用する人材」を育てることは、普段の会社業務にも役立つでしょう。地位や権力に固執する圧力も弱まるでしょうから、意思決定も健全化されそうです(会議出席者全員が「まぁ、いざとなったら辞めればいいし」と思える状況)。
具体的にどういったスキルを磨くのかは、担当業務によって変わってきます。「市場にニーズがあり、かつ希少性の高いスキル」を身につけてもらうことが求められるでしょう。
マーケティングでいったら「コンテンツマーケティングのノウハウ&人脈」あたりが最近熱いですね。これさえ磨いておけば、とりあえずどこの会社に行っても活躍できるかと。
ジェネラリストを育成するのではなく、スペシャリストを育成する、という方針になるともいえるでしょう。大企業的な部署移動のなかでは、なかなか「市場にニーズがあり、かつ希少性の高いスキル」を身に付けることはできないでしょう。
これからの人材マネジメントは、こうした形でリスクヘッジが進んでいくのでしょう。「その会社でしか通用しない人材」を抱えている企業は、危機に対して余分なコストが掛かってしまうのです。
ぼく自身も、スタッフを雇うときには「いつでも会社を辞められるようになってもらう」ことを意識するつもりです。「ごめん!景気悪いからちょっと業務委託にしていい?」「ん、了解です。ちょうど起業しようと思ってたんで!」というコミュニケーションが理想です。