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消費税小刻み増税の経済的影響、政府が検証する可能性

2013年 07月 28日 08:22 JST
 
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[東京 27日 ロイター] - 来年4月に3%の税率引き上げが予定されている消費増税をめぐり、増税幅を毎年1%ずつ小刻みに引き上げていく案などについて、政府が経済への影響を検証するなど具体的に検討する可能性が浮上している。複数の国内メディアが27日に報道した。

2015年10月のさらなる2%引き上げを含め、短期間で大幅な増税による景気への下押しが、安倍晋三首相の周辺で懸念されるためだ。ただ、そうした案が選択された場合、日本国債に対する信認が揺らぎ、かえって景気や財政に悪影響を及ぼす可能性が、政府関係者からも指摘されている。

毎年1%ずつの税率引き上げなど小刻み増税案は、安倍晋三首相の経済ブレーンである本田悦朗、浜田宏一の両内閣官房参与らがかねてから主張してきた。予定されている2年で5%の増税は、個人消費の冷え込みなど経済へのショックが大きく、日銀による異次元緩和や財政出動によるアベノミクス効果が腰折れし、高まりつつあるデフレ脱却期待を後退させる恐れがあるとの見方だ。

こうした中で27日、複数の国内メディアが、政府が税率の引き上げ幅や時期に関して毎年1%ずつなど小刻みな増税案を含めて景気や物価への影響を検証する方向で検討に入ったと報道。

これに対し、安倍首相は同日に訪問先のフィリピンで行われた記者会見で、複数案を検討するかとの質問に「そういう指示はまだしていない」と語ったが、増税判断は「しっかりと経済を成長させること、デフレからの脱却、同時に財政再建を進めることを勘案しながら、経済指標を見ながら内閣として私が適切に判断していく」と慎重に行っていく考えを表明。8月12日公表の4─6月期国内総生産(GDP)速報や9月9日の同2次速報(改定値)などを踏まえ、今秋に判断を下す考えをあらためて表明した。

景気への影響に配慮して毎年1%ずつなど小刻み増税を選択した場合でも、国際公約になっている財政健全化目標達成への不確実性が強まり、日本国債の信認が低下するなどかえって日本の経済や財政に悪影響が及ぶことが、政府関係者の一部で懸念されている。

政府は先進国で最悪の日本の財政への信認を維持するため、2015年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を半減させ、20年度までに黒字化するという目標を掲げ、国際会議でも表明している。

しかし、毎年1%ずつの増税になった場合、景気への下押し圧力が軽減されることを考慮しても、2015年度に3%の消費増税分の税収確保は困難とされ、15年度の赤字半減達成は「おそらく難しい」(複数の政府筋)とみられている。

さらに計画の変更には法改正が必要となることから、法案策定作業を考えれば法案審議は来年の通常国会になる可能性が大きく、増税開始時期自体が後ずれも想定される。

来春からの消費増税を織り込んでいる金融市場の波乱要因になる可能性も指摘されている。特に国債市場では、日本の財政規律に対して揺らぎが生じれば国債格下げなどの思惑が生じる可能性もあり、低位安定を取り戻している長期金利の上昇要因になることが懸念される。

毎年1%の増税の場合、増税の是非が毎年、政治の争点に浮上するとの声も政府部内にはあり、政治的なリスクが高まることを懸念する政府関係者もいる。遅くとも3年後には衆院選も行われることから、仮に小刻み増税を選択しても、途中で政治的判断から変更される可能性を指摘する声も政府部内にはある。こうした政治関連リスクも含め、市場では財政リスクの高まりが意識され、長期金利に上昇圧力がかかる展開も懸念されている。

(日本語ニュース 伊藤 純夫 竹本 能文 吉川 裕子 編集;田巻 一彦)

 

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7月27日、来年4月に3%の税率引き上げが予定されている消費増税をめぐり、増税幅を毎年1%ずつ小刻みに引き上げていく案などについて、政府が経済への影響を検証するなど具体的に検討する可能性が浮上している。都内で2011年1月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

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