中井、逆転３ラン！２ボールから「思いっ切り」原監督も絶賛

６回２死一、二塁、中井が左中間に逆転の３号３ランを放つ

　◆中日３―９巨人（２７日・ナゴヤドーム）　巨人が中日とのシーソーゲームを制し、貯金を今季最多タイの「２０」に戻した。杉内、福田の乱調で逆転を許した直後の６回、中井が左翼へ３号３ラン。１２試合ぶりの一発で試合をひっくり返すと、７回には村田、ロペスの連続アーチが飛び出し、高木竜に連勝。阪神がＤｅＮＡに敗れたため、ゲーム差は４・５。独走態勢に入ってきた。

　成し遂げた仕事の大きさに、中井は思わず我を忘れた。打球が左翼席に飛び込むと、力強く手をたたいて一塁を蹴った。右手を上げて走るスピードが無意識のうちに速まった。左翼席の大歓声を背に軽快に三塁を回り、またガッツポーズ。「いいところで打ててうれしいです」。１２試合ぶりの３号３ランはプロ初の逆転弾。初めてひと振りで試合をひっくり返した。

　逆転を許した直後の６回２死一、二塁で直球を捉え、プロ６年目で通算４本目のアーチ。４回１死二、三塁で三ゴロに倒れていただけに「甘い球なら思い切りいこうと思っていた。前の打席で走者をかえせず悔しい思いがあった。無我夢中でした」と笑った。三重・宇治山田商出身で名古屋はご当地。観戦に訪れた野球部の後輩の目の前でヒーローになった。

６回、逆転３ランを放った中井〈６１〉がナインに迎えられる

　右の大砲として期待され、２年目の０９年にプロ１号。順風満帆に思えたが、今季５月の通算２号まで４年を要した。先日、中井は苦い記憶をひもといた。「あれから手術もしましたね。病室で麻酔から目が覚めた時の激痛は忘れられない。野球ができないのはつらかったです」。１０年オフに右足甲を痛めて関節固定手術。打撃を支える軸足に力が入らず、復帰に半年を要したことがあった。

　ちょうどその頃、２軍でリポート提出が課された。テーマは「３年後の自分について」。中井は力強く「１軍でプレーして活躍しています」と記した。坂本、藤村ら同世代の活躍に危機感を感じてはい上がり、今季は１軍に定着。「このチャンスをつかまないといけない」。夕食時は「お酒を飲むとご飯をしっかり食べられなくなる」と飲酒を控えて夏バテを防止。坂本を見習って就寝前のストレッチを日課にするなど、過去の教訓から体調管理を徹底している。

　寝坊のため降格した先月。仙台遠征中に行われた２軍の決起集会で、あえて岡崎２軍監督の横に座った。反省の意を示すと「これを糧に頑張ればいいじゃないか」と背中を押され楽になった。２軍でバットが下から出る癖が直らず苦しんだ時期も「強くたたけ」と指導を受けてきた。「岡崎さんや岸川さん（２軍打撃コーチ）には１年目から見てもらっているので」と恩返しに燃えている。

　４日の阪神戦から１４試合連続で１番を務めたが、今回の中日戦は８番。「打順にこだわりを持てるほどの選手じゃない」。中井に積極打法を求める原監督は「思い切りのいい彼の良さが出た。プロの中でも上位のパワー。ああいうところで出るのは大きい」と値千金の一発を絶賛した。「明日も勝って３連勝したい。必死にやるだけです」。精悍（せいかん）な顔つきで、力強く前を向いた。