このテーマは面白いので、もう少し書いてみます。
クラウドソーシングが空き時間を埋める
「クラウドソーシングは会社員の「空き時間」を埋めていく」という記事で、ビジネスパーソンの空き時間(アイドルタイム)がクラウドソーシングによって埋められていくという未来を予測しました。
たとえばサイゼリヤのアルバイトを考えてみましょう。今、彼らは手元にiPod touchを持っています。このデバイスで注文を処理しているわけです。
いかに効率的なオペレーションを組んでいるとしても、やはり飲食店、どうしても「お客さんに対して店員が多すぎる時間」が発生してしまいます。突然の大量入店や、スタッフの欠員にも対応できるよう、あらかじめ多めにスタッフを配置することもあるでしょう。となると、「人余り」は必然的に発生することになります。
サイゼリヤに詳しいわけではありませんが、「人余り」が発生している時間は、おそらく仕事を特に振り分けることをせず、実質「プチ休憩」として機能しているのではないでしょうか(ぼくがバイトをしていた飲食店では、そんな感じでした。お客さんが少ない時間は、のんべんだらりと休憩。昼・夜はフル稼働)。
さて、クラウドソーシングが進化していくと、サイゼリヤのスタッフは、手持ちのiPod touchで細切れのタスクを振り分けられるようになるでしょう。
仕事は山のようにあります。社内のマニュアル文書の翻訳や校正、商品データベースの整理、オペレーション改善アイデアの投稿、新人スタッフの質問への回答などなど、そういった仕事を、アイドルタイムにこなすことが求められるようになると考えます。
タスク処理の成果に応じて、追加で報酬(時給アップなど)が支払われる仕組みも導入されるかもしれません。iPod touchのなかには仕事が詰まっており、「暇な時間」にはそれを積極的に処理していく。労働がどんどん効率化されていくわけです。
無論、サイゼリヤというのは話をわかりやすくするための一例です。どんな仕事をしていても、暇な時間には細分化されたタスクが入り込んでくると見て、まぁ間違いはないでしょう。
「暇な時間」が失われる
短期的に起こりうるのは、仕事時間における「暇な時間」の消失でしょう。テクノロジーと資本主義は非効率を嫌います。所定の休憩時間を除いた実働時間においては、1分単位で仕事が詰め込まれるようになります。今よりも一層強烈に、生産的であることを求められる世界です。
労働に対する報酬が下がる
長期的に見れば、クラウドソーシング的労働が普及することによって、仕事に対する金銭的報酬は、少なくとも相対的に下がっていくでしょう。
上で挙げた飲食店(ex.サイゼリヤ)の例でいえば、「お客さんに対して店員が多すぎる時間」というのは、経営者からしたら「従業員の稼働率が100%でない」という状況です。「遊んでいる時間(アイドルタイム)」といってもいいでしょう。
では、仕事を詰め込むことで「稼働率100%」に近づけることができたとき、経営者は追加の報酬を労働者に支払うでしょうか。
常識的に考えると、これは「NO」だと考えられます。勤務時間である以上、稼働率を高めるのは、当然のように労働者に期待されることだからです。残業は追加で報酬をもらえますが、所定の労働時間である以上、追加報酬は出ない方が自然です。
しかしながら、これは「遊びの時間」を持っていた労働者側から見たら、「仕事が増えたのに、給料が上がらない」という反感をもたらすことになります。遊びの時間にも価値があり、それによって職場は回っているんだ、という声も上がるでしょう。
残念ながら、こうした労働者の叫びは、経営者に聞き入れられることはないでしょう。処理できるタスクを分配し、所定の労働時間の稼働率を高めるという話は、社会的に見ても間違った話ではありません。
仕事はより効率化されますが、賃金にはさほど反映されないでしょう。結果として、労働に対する報酬は下がっていくと考えられます。
ツイッター上ではこんな意見も。まぁ、そういうことなんでしょうね。
「レジ打ちにもレジ打ち以上の能力を要求しつつレジ打ちの給料しか与えない」ことを可能にし、「ぎりぎりの人足で全ての業務が進んでいくことを常態化させる」ことを推し進める。その様な世界が理想的ならばブラック企業は理想化された世界の最先端企業となるよ。それでいいのかな? @IHayato
— taku (@_heathworld_) July 26, 2013
資本主義的な搾取はまだまだ進化の余地があるということです。共産党の参院選マニフェストではありませんが、連続労働時間規制、残業時間規制などの仕組みレベルの解決策が求められていくと思われます。
ちょうど新刊の電子書籍でもそんなテーマが出ているのですが、これからはグローバリゼーション、ソーシャル化によってますます格差は広がっていきます。小林一郎教授は、『「2:8」どころではなく「1:99」になる』という刺激的な話をなさっています。
まさに、望むと望まざるとに関わらず、ぼくらの仕事のあり方は変わっていくのでしょう。残念ながら、マニュアル的に働く以上、労働に対する金銭的対価は下がっていく一方だとも思います。
みなさんはそんな未来について、どう考えますか?ぼくらの働き方は、どう変わると思いますか?ぜひ教えてください。