この層は地震や活火山がほとんどない地域では地下10キロ以上というような深さまで掘らないとたどり着けないが、火山の多い日本では深さ3~4キロ程度の比較的浅い地域に存在している。
つまり簡単な掘削で大きな熱源を得られるというわけだ。そして、さらに重要なのは、この掘削には外れがないという点である。
深くまで掘っても失敗がないのでコストは安い
従来の地熱発電は、脆性帯と呼ばれる浅い層にできている割れ目に溜まった温水にパイプを打ち込んで温水を得るため、割れ目を的確に探し当てる必要があり、パイプを打ち込んでも温水が出ないという失敗もあったが、延性帯発電ではこれがない。
流動している延性帯にはそもそも亀裂がなく温水も溜まっていない。そこにパイプを打ち込み、高圧の水を注入することで人工的な亀裂を作る。
そこにさらに水を注入し、そこで温められた温水(高圧なので摂氏500度以上)を地上に戻す。割れ目は人工的に作るために掘削の失敗がほとんどないのが特徴だ。
このため、深く掘るためにコストはかさむが、半面掘削に失敗がないので従来の地熱発電とコスト的にはほとんど変わらないという。
村岡所長は「このような比較的浅い地域に延性帯が広がっているのは、広い世界の中でも東日本を中心とする日本やカムチャツカ半島、フィリピン、インドネシアなど限られているんです」と話す。
また、従来型の地熱発電の1つ、高温岩体発電では、地層の割れ目に水を注入するとき天然の割れ目から水の漏れが発生する。ひどい場合には注入した水の半分以下しか熱水として回収できない場合がある。
しかし、延性帯涵養地熱発電の場合には地層に元々の割れ目がないので水が外に漏れる心配がない。このため注水した水はほぼ100%熱水として回収できるメリットがある。極めて効率の高い地熱発電所ができるのだ。
大きな火山、地震地帯ではあるけれど、豊かな地熱資源がすぐ手の届くところにある、世界に偏在する資源というわけである。この資源を有効活用しない手はない。
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