「ぼくたち、わたしたちにもできることがある」−。遠州灘海岸に近い浜松市立東部中と県立江之島高校(ともに南区)の生徒らが八月十九〜二十一日に、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市に、ボランティアツアーに出掛ける。費用は地元自治会や企業、NPO法人などの善意によって賄えた。生徒たちは「共に生きる」思いを地域から託された。
震災直後、当時の県立浜松西高中等部の生徒たちでつくったグループ「SmilinGreen(スマイリングリーン)静岡」が気仙沼に文房具を送る活動を始めた。浜松市の市民協働センターやNPO法人「魅惑的倶楽部(エキゾチックくらぶ)」が仲介し、二〇一一年夏には子どもらを浜松に招くなどして交流を深めてきた。
今年に入り、気仙沼のボランティアから「恩返しがしたい」との申し出もあり、市民協働センターの長田治義所長が「まだ被災地に行っていない、沿岸部の近くに住む生徒に現地を見てもらい、被災者の気持ちなどを感じ取ってほしい」との思いを持った。
親交があった東部中の須山嘉七郎校長らに相談。しかしツアーにはバスのチャーター代など多額の費用が必要で、学校単独では難しかった。
地域の人らに話を持ち掛けると「子どもたちにこそ見てきてもらいたい」「子どもたちの力が必要になる時が来る」などの声があがり、四十万円近くの善意が集まった。テントなどの支援物資を合わせて届けることで区役所の補助も得られた。参加者負担を抑えながら、総費用百二十万円のツアー計画が実現した。
東部中が六月中旬にツアーの参加者を募ると、予想を大幅に上回る三十二人が希望。五人の江之島高生徒も加わり、保護者や引率教師らとバスで十二時間かけて向かう。
ツアーに参加する生徒ら。長田さん(左)の話を聞きながら被災地に思いをはせる=浜松市南区の東部中学校で
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気仙沼市では、同じ世代の子どもがいる家庭に宿泊しながら、被災地ガイドらから当時の話を聞いたり、地元老人クラブのお年寄りらと郷土料理を作ったりして触れ合う。
生徒たちは南海トラフ巨大地震への危機意識が強い。東部中三年の立石映(はゆる)さん(14)は「実際に現地に行き、この目で見て感じた思いを持ち帰る」、藤田旭君(14)も「震災時どんな気持ちだったか知ることは浜松に必要だ」と話す。地元で保育士になるのが夢という江之島高三年の山中美咲さん(17)も「保育士になったら、子どもをどう避難させたらいいか。きっと役立つ」と真剣な表情で語る。
須山校長は「人と人とのつながりを大事にできる人間になってほしい。震災時にも必ず生きる」と話す。
ツアー後、市内で報告会を開く。来年からは南区の他の中学校や高校からも参加者を募り、交流の枠組みを広げていく。
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