雨宮処凛と憲法生活:鶴橋かいわいの巻
毎日新聞 2013年07月26日 大阪朝刊
水分補給のため、お好み焼き屋さんの成駒家で自家製の冷やしあめを。一息つくと、「あー、パギやん(趙さんの愛称)や!」。小学生に取り囲まれた。在校生の7割強が朝鮮半島にルーツを持つ、市立御幸森小学校の児童だ。「新聞の取材!? 写真撮って撮って!」と大騒ぎ。道行く人も、次々と趙さんに声をかける。「親戚のおじさんと田舎に来た気分(笑い)」(雨宮さん)
再びの鶴橋駅。ガード下のホルモン店、趙さんが学生時代から通う茂利屋(もりや)へ。で、またも飲む。「雨宮さん、これコリコリ、こっちウルテ。何やと思います?」。「すっごくおいしいけど???」。「コリコリは大動脈でウルテが気管。ホルモン焼きは、韓国にもない誇るべき在日文化ですわ」と胸を張る趙さん。
雨宮さん、「今日は、源氏のおばちゃんが言う『つながり』を体感しました。今の日本人は、不幸で孤独そうにばかり見えるけど、ここには国籍問わず誰もにすごい温かさがある。ここで育ったら、私は右翼に入らなかったかも。結局、『何国人である』って、どういうことなんだろう?」とやや混乱気味なのは、酔いのせいだけではなさそう。
趙さんが答えていわく、「『在日コリアン』いう言い方、どうもしっくりきまへんねん。だから、僕は在日関西人って名乗ってるんですわ。国って本当は、自分が背負える範囲を超えたものですやん。差別はもちろん許さへん。そのうえで、本当は誰もが、アイデンティティーは在日関東人とか、在日北海道人、在阪東北人とかで、ええんとちゃいます?」。=次回は8月23日掲載
◆日本国民の要件
国民の要件は、国籍法が定める。基本は、父か母が国民なら子も国民。外国人の日本国籍取得は▽5年以上日本在住▽素行善良▽不法団体に関わったことがない−−などが条件。在日コリアンも日本国民になる人は増えたが、アイデンティティーの問題などで、あえて日本国籍を選ばない人も多い。アメリカなど、親の国籍と関係なく、その国で生まれると国民になれる国も。
◆在日コリアン
日本の植民地時代、朝鮮半島から経済的事情や「強制連行」で来た人らとその子孫。在日韓国・朝鮮人とも。人数は12年末現在約38万5000人(特別永住者数)。
◆コリアンタウン