川口市の焼き肉店経営金潤喜さん(69)殺害事件発生から二週間、行方が分からなくなっていた鳩ケ谷市南七、内装業岩井誠治容疑者(40)が死体遺棄容疑で逮捕された。岩井容疑者にとって、金さん宅の改装工事は自らにとって転機となるかもしれない仕事だったが、意欲が空回りして予算オーバー。県警は、工事代金の支払いをめぐるトラブルが事件の発端となった可能性もあるとみて捜査している。 三十日午前十時、長野県の長野駅近くのパチンコ店に入った無精ひげ姿の男に、県警の捜査員が近づき、「岩井か」と声をかけた。二週間にわたって同県内のホテルを転々としていた岩井容疑者は「そうです」と素直に答えた。所持金は約十万円だった。 関係者によると、岩井容疑者は十年ほど前から鳩ケ谷市議の父親が経営する会社の仕事を手伝っていた。昨春、同社の取締役に就任したが、重要な仕事を任されたことはなかった。同容疑者にとって、金さんの店の改装は、仕切りを任された初めての仕事だった。 川口オートレース場に出掛けた帰りに立ち寄るようになっていた焼き肉店で、金さんから店舗の改装を計画していることを知らされた。岩井容疑者は熱心にくどいて自ら工事を受注したのだ。 岩井容疑者は張り切り、親せきにも「自分が仕事をこなせたら褒めてくれるかい」と語っていたという。しかし、二百万円ほどで請け負った改装工事費は、いつの間にか三百数十万円にまで膨らみ、一緒に工事をした業者から支払いを迫られていた。 岩井容疑者の行方が分からなくなって以降、家族は何度も連絡をとろうとしたが、同容疑者の携帯電話につながることはなかったという。岩井容疑者の母親は六月十九日、「息子は優しくて殺人なんてできる人間じゃないと信じています」と話していた。 岩井容疑者の親族の男性は「今でも信じられない。お金や仕事で悩んでいる様子はなく、動機が分からない」と話した。
[記事全文] 【東京新聞】
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