中国で所得格差や失業、不信感がじわり拡大=北京大調査

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  • TOM ORLIK, SOPHIA CHENG

 

 中国で全国的に行われた新たな調査では、貧富の差が一段と広がっていることが浮き彫りになっている。また、失業率が既に高い水準に達するなか、経済成長が鈍化したことが示唆されている。

 北京大学の中国家庭研究班が5つの省の1万4960世帯を対象に実施した調査では、格差が憂慮すべき水準に達していることが示された。2012年における全世帯の総所得のうち、所得下位25%の世帯が占める比率は3.9%に過ぎず、一方で上位25%の占める比率は59%に達している。

 この数字に基づいた場合、貧富の格差を測る際によく使われるジニ係数は0.49となる。調査の主執筆者の1人で謝宇ミシガン大学教授はこの数値について、最近行われた他の調査結果より小さいと指摘した。ジニ係数は0と1の間の数値で示され、数値が大きくなるほど格差が大きいことを表している。つまり、1なら社会の全所得を1人が独占している状態を示し、0なら格差が全くないことになる。今回の調査で示された数値は0.51という10年の数値からも低下している。都市部より農村部の所得増加率が高かったためだ。

 とはいえ世界各国との比較や過去の実績と比べると、中国の現在の格差は驚くべき水準と言ってもよいだろう。アフリカや南米など格差が最も大きい国と同等ではないものの、それに近い水準に達している。米中央情報局(CIA)によると、米国でさえ2007年のジニ係数は0.45に留まっている。

 大きな格差は社会不安が伴うものだ。また、富裕層の高貯蓄で投資熱が高まる一方で消費が阻害されるなど、中国が直面している経済的不均衡の一因にもなっている。

 現在の経済成長の鈍化はより深刻な問題を伴っていると思われる。それは公式データより高い失業率のことだ。調査での失業率は4.4%と低い水準だが、適職がなく職探しをあきらめてしまった、いわゆる「求職意欲喪失者」を含めると、9.2%に達する。この数字は米国より高い。この分を含めた2013年6月の米失業率は8.4だった。ただし、定義上の問題があり、直接比較は難しいかもしれない。

2012年における全世帯の総所得のうち、所得下位25%の世帯が占める比率は3.9%に過ぎず、一方で上位25%の占める比率は59%に達している

 特に若年層の失業率の高さは潜在的な懸念材料だ。例えば、16歳から19歳の男子については狭義の失業率が15%を超えている。また、学歴別に見た場合、中卒の失業率が最も高く、大卒が最も低かった。ただ、未熟練労働者の不足や大卒の就職難といった中国でよく聞かれる話と矛盾している。

 労働市場の最近の動向を見た場合、失業問題はこの調査が実施された12年以来悪化していると思われる。調査会社マークイットとHSBCホールディングスが発表した7月の中国製造業景況指数(PMI)からは、製造業では人員削減が09年3月以来最も急速に進んだことが読み取れる。

 ただ、調査スタッフらは警戒すべき兆候がほとんどなかったという。謝氏は「失業問題は依然として他の途上国よりもましな状況」と言い、「肉体労働者の賃金が上昇しており、これは深刻な失業問題が中国には存在しないことを示すものだ」と指摘した。

 今回の調査ではこの他、開発の痛みに伴う混乱と急激な世界大国化が社会に対する国民の姿勢に影響していることが示された。他人への信用度について、「全く信用しない」の「1」から「完全に信用する」の「10」までの尺度で評価した場合、調査に回答した中国人の平均スコアは2.2と、信用度が低いことが分かった。また中国共産党幹部は4.9とあまり信用されていないが、米国人に対する2.5ほどひどくはなかった。最も高かったのは両親で、9.1だった。

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