弘前大被ばく医療総合研究所の床次真司教授(放射線物理学)らの研究グループは、福島第1原発事故直後に福島県内で行った放射性ヨウ素の測定結果について「大気中濃度は最大でも1立方メートル当たり約10ミリベクレルと低く、吸入による被ばくは無視できる」と発表した。26日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。
研究グループは2011年3月17〜19日、福島、郡山、いわき市と川俣町の4カ所で、大気中に浮遊する放射性物質のヨウ素131、セシウム134、セシウム137を測定した。
このうち甲状腺がんの原因となるヨウ素の濃度は、いずれも1立方メートル当たりの平均値で、いわき市約10ミリベクレル、福島市約3ミリベクレル、郡山市約2ミリベクレルだった。川俣町は検出限界を下回った。床次教授は「全てミリ単位であり、被ばく線量も小さいと考えられる。人体に影響を与えるほどではない」と分析した。
研究グループは、表層土壌と植物、水に含まれる放射性物質についても宮城、福島両県の9市町11カ所(宮城県丸森町、福島、郡山、いわき市など)で測定。被ばく線量推定の指標として、セシウムに対するヨウ素の割合「ヨウ素セシウム比」を出すとほぼ6〜9の範囲内だったが、原発南側のいわき市だけ50〜60程度と高い値となった。
床次教授は「事故直後、南方に流れた放射性物質を含む雲(放射性プルーム)の組成や性質が、北西方向のプルームとは明らかに違うことを示すデータだ。今後、南部地域の住民の被ばく線量を推定する際の手掛かりになる」と語った。