きょう15日、安倍総理がTPP交渉参加を正式に表明します。私はこの表明は拙速であり、国益を損なうリスクが大いにあるTPPへの交渉参加に対し、断固反対の表明をさせて頂きます。
2013年3月15日
「日本政府のTPP交渉参加表明に断固反対」
安倍総理は15日にTPP交渉参加表明をすると言われています。私はTPP交渉参加に以下の理由で断固反対を表明させて頂きます。
●『聖域』を作れるかどうかは不透明で、作れたとしても一品目のみ
→交渉には全加盟国の承認が必要。例外措置を認めてない国もある。日米二国間だけで会談して「聖域」を作ることができるとの国内への発信はまやかし。米韓FTAでは関税撤廃しなかったのは@乳製品AはちみつB馬鈴薯CオレンジD食用大豆Eコメ だけである。しかも、@〜DはFTA発効時より一定の数量が無税で輸入できる関税割り当て枠が設定。無傷で自由化から守ったのはコメだけ。しかも@〜Dは毎年、枠が拡大し、最終的に事実上の自由化が実現することになる。つまり、米韓FTAの聖域はコメのみ。USTRはTPPは米韓FTAよりハイレベルであると表明しているうえ、ニュージーランドは聖域を設けることを認めていない。また、米国議会や米国のコメ生産団体からは「除外を認めない」という圧力もあり、聖域ができるかは不透明であり、聖域を作れたとしても超限定的。
●交渉参加表明が「政府の専権事項」とするのは間違いである
→交渉参加の是非は『憲法第73項2項にある「外交関係の処理」が政府専権事項である』から、国会承認は不必要だと言っている。しかし、このTPPは参加により国内の大幅な制度の変更を迫られるリスクやISD条項など国家の主権にかかわる条項も含まれており、国民的な議論が必要。ところが、満足な情報公開も、議論もないままに交渉参加を表明するのは民主主義への冒涜。また、TPPの交渉内容は発効から4年間、守秘義務があり、秘密裏に交渉が進み、情報公開されないというトンデモないルールもある。
●国民皆保険制度は崩壊の道
昨年、私は外務省からのヒアリングで『TPP協定交渉の中で混合診療の全面解禁は求められていない』という答弁がありました。これは当たり前のことで、交渉参加国の中で公的医療保険がないマレーシアや高齢者と貧困層のみを対象にした公的医療保険がある米国などまちまち。しかも、日本が交渉参加していないわけですから、混合診療うんぬんが議題に上がるわけがないのです。しかし、過去、対日要望でも混合診療の解禁を求められていた事実があります。また、米国の製薬会社は自由診療の部分で保険適用外の高い薬をたくさん消費してもらい、利益を出したい思惑があるほか、医療機器や薬価基準制度の見直し(中医協への米国系企業の参加)、価格規制の撤廃を求められる恐れがあります。高額の医療や薬品、医療機器の高騰、さらにTPPで我が国が混合診療に踏み込めば保険給付の範囲が縮小、自己負担分を民間保険で補うという話になり、高所得者のみが質の高い医療を受けられるという『命の沙汰も金次第』という世界になり、世界から称賛されていた『国民皆保険制度』は崩壊に至ってしまいます。
●TPPで医療の営利化が進む
大阪府で医療特区が検討されているようです。知事は混合診療認可を行う考えがあるよう。ちなみに韓国の医療特区では6か所の営利病院があり、米国の医師、看護師が韓国の医師免許がなくても、従事できるようになっています。当然、価格は高く、また米韓FTAのラチェット条項により一度建設が決まったら、撤回できない。日本の医療機関は『人の命と健康にかかわる医療の公共性』を掲げ、医療を営利の対象とすることを禁じています。日本の医療制度は日本固有の相互扶助の精神に基づき、それを支える医師の皆様は『医は仁術』を現場で実現しているわけです。医療の営利化は、『患者のための医療から、投資家や企業のための医療』へと、医療そのものの目的を大きく変貌させてしまいます。
●保険、薬価、そして、知的財産権
米国研究製薬工業協会は『知的所有権のさらなる保護』を求める要望書を各国のTPP交渉官に送っています。米国は知的財産権の期間延長のみならず、「エバーグリーニング条項」=既存薬の形や使い方を変えた医薬品を、効果がアップしていなくても新薬として特許申請する手法を導入しようとしています。エバーグリーニングは既存薬の権利独占が狙いで、このルールが認められると、ジェネリック薬が市場に参入するまでに長い年月がかかるようになります。
●日本の外交交渉力が極めて低い中で“国益を守る”ことは無理である
→私が世話人をしていた『TPP慎重に考える会』では一昨年から昨年にかけて交渉にあたる外務官僚、経産官僚から何度もヒアリングをしましたが、彼らの多くは過度な米国追従であり、日本の農業を軽視し、国民に都合の悪いことを隠す現実を見てきました。一方で米国は通商交渉専門のUSTRが100名程度の交渉団であたっています。USTRの組織図を見ると、日本担当、農業交渉専門セクション、知的財産セクションなど専門セクションを抱えています。職員も企業幹部、代理人、ロビイストを経て職員になり、辞めてから元に戻る例も。いわゆる政府と民間を行き来する米国ならではの回転扉です。強烈な利害を持った人間が交渉にあたるわけですから、国益を守るという気概や命がけの交渉をしない日本が勝てるわけがないのです。
以上の理由で交渉参加すべきではありません。現段階ですでに交渉参加している9か国以外はルールに口を出せないことになっているようです。交渉参加は地獄行きのバスに笑顔で乗り込むようなもの。
断固反対です。
2013年03月15日
安倍総理のTPP交渉参加表明に断固反対
posted by 斎藤さん at 17:08| 日記