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これまでの放送

No.3383
2013年7月23日(火)放送
検証“ネット選挙”
ビッグデータを活用せよ 自民大勝の舞台裏

ネット選挙の解禁を受け、自民党は選挙戦略の一翼を担う独自のチームを立ち上げました。

「おはようございます。」

「おはようございます。」

党本部7階に設置された自民党ネットメディア局の拠点です。
今回、NHKは密着取材を行いました。

ここで毎日分析していたのは、インターネット上の膨大な有権者の声、ビッグデータです。
世論の変化の兆しをマスメディアの報道と合わせていち早くつかみ、選挙の戦略に生かすのがねらいです。
ネットメディア局を率いる平井卓也衆議院議員です。
IT企業や大手広告代理店と協力し、50人態勢のチームを編成しました。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「毎日いろんなことが起きることに対して、世の中がどう考えているかつかむという意味で、ネットは割と早く反応してくれるので、それに対してこちらも早く情報をつかめる。」



ネットメディア局のビッグデータ分析の仕組みです。
有権者がツイッターやフェイスブック、ブログなどに書き込んだ政治に関することばを抽出。
自民党の政策に対する共感や反発が日々どう変化しているのか読み取り、訴える内容に反映させていくというものです。

「一番のキーワードはアベノミクスに関する質問だけ。」

公示の2週間前。
ネットメディア局が検討していたのは、国民の支持を背景に選挙戦で前面に打ち出そうとしていた経済政策、アベノミクスについてでした。
会議では分析を行った担当者からある指摘がありました。

メディア分析会社
「我々も集計してみて、なるほどと初めて思ったんですけど、アベノミクスでデフレを脱却できると思うか?
『思わない』という人が増えてしまっている。」



ネットメディア局が分析対象の1つにしていたのが、ツイッターです。
“経済再生。”
“アベノミクスに期待したい。”
“ボーナスが3万円アップした。”
“アベノミクス効果きたか。”

こうした好意的な声の一方、直前の株価急落の動きを受け、“アベノミクス失敗。”
“株安で景気がよくならない。”
“株価が下がり過ぎ”など、不安の声が上がり始めていました。



NHKもツイッター上のアベノミクスに関する書き込みを分析しました。
株価が急落した先月(6月)13日、書き込みの数に大きな変化がありました。




アベノミクスとともに書かれていたことばです。
丸の大きさが数を表しています。
この日は、失敗ということばが最も多くなっていました。
世論の変化の兆しをつかんだネットメディア局。
アベノミクスに対する不安の声も踏まえて、何を訴えるかが選挙戦の鍵を握ると考えました。

メディア分析会社
「アベノミクスでどうなんだという話が自民党に対する一番の疑問点として提示されていて、どう応えるかっていうことが、ひとつのポイントになると思うので。」

「安倍総理が、たった今、ご到着をなさいました。」

参議院選挙が公示された今月(7月)4日。
安倍総理大臣が改めて強調したのは、アベノミクスの実績や成果を示す具体的な数字でした。

安倍首相
「私たちの政策によって、今年1月、2月、3月、GDPはプラス4.1%になりました。
皆さん、マイナスからプラスに変わったんですよ。
雇用においても、有効求人倍率は0.9。
あのリーマンショックの前に戻ったんです。
民主党政権が3年間でできなかったことを私たちは、半年間でやりました。」

ビッグデータの分析結果は、候補者の選挙運動にも活用されていました。
山梨選挙区の自民党候補、森屋宏さんです。
県議会議員出身で国政選挙は、初めての挑戦です。
今回、ネットメディア局は、すべての候補者に情報端末を配付しました。

「ここに専用のアプリが入っています。」

自民党ダッシュボードと名付けられた独自の取り組みです。
ビッグデータから世論の変化の兆しをつかみ、何を訴えれば有権者の支持を得られるのか。
毎日レポートとして届けられます。

自民党 森屋宏候補
「どうもありがとうございます。」

森屋さんが選挙戦で懸念していたのは、地域の有権者の多くが景気が上向いている実感を得ていないことでした。

「地域経済のことを懸命に考える人が必要であります。」

そんな森屋さんのもとに、この日届いたのが地域経済に言及したレポートでした。

自民党 森屋宏候補
「日銀が7月4日に発表した地域経済報告。
生産や雇用が好調に回復している。」

「実績として訴えやすい?」

自民党 森屋宏候補
「こういう数字をいただけると、ありがたいですよね。
直近の数字をこういう形でいただけると、街頭演説にもいかせますよね。」

「それでは森屋候補本人よりごあいさつをさせていただきます。」

早速、演説の内容に盛り込みます。

自民党 森屋宏候補
「こんにちは。
お暑い中、このように大勢の皆さん方お集まりをいただきましてありがとうございました。
日銀なんかの地方の経済の状況報告なんか見ますと、だいぶその報告はよくなってきた。
7月4日に報告がございましたけれども、全国9地区の中で東北を抜いたあとの8地区は景気が上向いてきた。
製造業の現場が上向いてきた。
あるいは雇用もよくなってきた。」

自民党 森屋宏候補
「通常だと新聞とかいろいろなもので入手していかなきゃいけない情報もありますけど、こういう形で送られてくる、絞られた形で送られてくるから非常にありがたかった。
話しているうちに徐々にわかっていただけたと手応えはありました。」

アベノミクスを前面に掲げ、確実に支持を広げる自民党。
ネットメディア局ではビッグデータの分析からある懸念材料をつかんでいました。

大手広告代理店
「『原発再起動』ということで言うと、2000から4000と倍になっている。」

原発再稼働についての書き込みが急増したのです。
きっかけは、この前日。
原発の運転再開に向けて、地元自治体を訪問した東京電力が強い反発を受けたことでした。
NHKの分析でもこうした動きを受け、原発に関する書き込みが増えていたことが確認されました。

詳細に分析すると原発とともに自民党や是非などのことばが多く語られ、自民党の原発政策の是非に関心が高まっていることがうかがわれました。
安倍総理大臣は選挙前G8サミットのあとの記者会見で、原発の再稼働について次のように述べていました。

安倍首相
「原発の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ねます。
委員会が新たな基準に適合すると認めた場合には、その専門的判断を尊重して、再稼働を進めていきます。」

ネットメディア局は再稼働を進めるということばだけが独り歩きすることに神経をとがらせていました。

「再稼働申請の時期って、これから断続的に、ですよね。」

「明日以降の党首討論でも、ちょっとフォーカスされて、クローズアップされる可能性がこういったところからあるんじゃないかと思います。」

「変に突っ込まれた時に『いや再稼働しないといかんでしょう』みたいな風に思わず言ってしまったりすると、そこも捉えられちゃうということです。」

官邸のメンバーも出席しているこの会議。
より丁寧に党の考えを説明することにしました。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「すぐに再稼働するかしないかという議論になってしまうと、これは白か黒かみたいな話になるんですけど、要するに誤解されないようにまず“安全第一”だということを徹底しようと。」


翌日、安倍総理大臣は各党の党首が集まるテレビ討論に臨みました。
野党からは原発の運転再開に反対する意見が相次ぎました。

共産党 志位委員長
「事故の収束ができていない。
事故の原因の究明もできていない。
こういう下での再稼働というのは私は論外だと。」


社民党 福島党首
「原発の推進、原発再稼働、原発輸出をすべきではありません。」




安倍首相
「安全第一で考えなければなりません。
その中で原子力規制委員会において、厳しい安全基準を作っている。
この基準を満たさなければ、我々はもちろん再稼働はしません。」

安全基準を満たさなければ再稼働しないという表現で、安全を最優先する姿勢を強調しました。
自民党優位で進む選挙戦。
ネットメディア局がてこ入れを図ったのは、接戦が続いていた選挙区でした。

「各議員のネット戦略の通信簿と言いますか。」

この日、取り上げられたのは岩手選挙区。
インターネット上で自民党候補がどれほど話題に上っているかを分析し、支持の広がりを探りました。
ツイッターの書き込みの推移です。
最も関心を集めていた候補者は、多い日で1日およそ300件。
一方、自民党の候補者は80件程度でした。
ビッグデータの分析から候補者が関心を集めていないと考えた自民党。

安倍首相
「恐らく日本中で最も厳しい選挙区が、この岩手の参議院の選挙区であります。」

巻き返しを図るため、総理大臣の遊説では珍しい新たな取り組みを行いました。
安倍総理大臣の岩手県内での演説をネットで中継したのです。
視聴したのは1万3,000人余りに上りました。



この日、自民党候補に関する書き込みは472件に急増。
初めて他の候補を上回りました。
結局、自民党は今の選挙制度の下で最も多い、65議席を獲得しました。

「山梨選挙区、森屋宏当選確実です。」

今後もビッグデータ分析の活用を続けることにしています。

自民党 ネットメディア局長 平井卓也衆院議員
「これだけ色々なものがインターネットによって変わってきている中で、政治だけが変わらないっていうことはありえない。
今回は多少装備も他の政党よりは分厚くやってたと思いますが、そういうノウハウを積み上げてきたので、今後ともそういうものを積み上げていきたい。」

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